姿勢・骨格

[#30]「骨で支える身体」と「筋肉で支える身体」の違い。肩こり・疲れが抜けない根本の話

「骨で支える身体」と「筋肉で支える身体」の違い

文=けんぞう(美容整体師・小顔矯正士/施術歴23年・延べ4万5千人)

こんにちは、整体師のけんぞうです。

「マッサージに行くと楽になるけど、数日で戻っちゃうんです」
「ちゃんと寝てるのに、朝から身体が重くて」

施術歴23年・延べ4万5千人の身体と向き合ってきた中で、いちばん多く伺ってきたのが、この2つの言葉です。

肩こり、首こり、背中の張り、腰痛、頭痛、そして寝ても抜けない疲れ。悩みの形はいろいろですが、実はその根っこに、共通するひとつの仕組みがあります。

それが、今日のテーマ。「骨で支える身体」が「筋肉で支える身体」に変わってしまう、という話です。

この記事は、当サイト「カラダのねっこ」のすべての記事の土台になる考え方をまとめた1本です。少し長いですが、ここが分かると「なぜ枕を替えても眠れないのか」「なぜマッサージで戻るのか」が、するするとつながっていきます。どうぞ、ゆっくり読んでいってください。

ボウリングの球ほどの重さの頭を、毎日支えているのは何か

みなみ
みなみ先生、いきなりですけど…人間の頭って、どのくらい重いか知ってますか?私、この前子どもを抱っこしながらふと思ったんです。頭って意外とずっしりしてるなって。
けんぞう先生
けんぞう先生いいところに気づきましたね。大人の頭は、だいたいボウリングの球ほどの重さがあると言われています。
みなみ
みなみボウリングの球!あれを一日中持ち歩いてたら、腕がパンパンになりますよね…。
けんぞう先生
けんぞう先生そうなんです。でも私たちは、その重さを首の上に載せて、朝から晩まで生活している。しかも、普段は重さをほとんど感じていませんよね。なぜだと思いますか?
みなみ
みなみ言われてみれば…なんでだろう。首の筋肉ががんばってるから?
けんぞう先生
けんぞう先生筋肉「だけ」でがんばっていたら、とっくに悲鳴を上げています。実は、重さを感じずにいられるのは、骨の積み上げ方に秘密があるんです。

人間は、重力という逃げられない環境の中で、二本足で立って生活しています。ボウリングの球ほどの頭を載せたまま、立ち、歩き、座り、家事をして、子どもを抱っこする。これを可能にしているのが、身体の「設計図」です。次で詳しく見ていきましょう。

「骨で支える身体」の設計図

解剖学的に正しい骨格は、下から順番に、こんな積み上げ構造になっています。

積み木のように、下から順に積み上がっているイメージです。そして、この設計図でいちばん大事なポイントが、背骨のかたちです。

横から見た人体の骨格イラスト。背骨がS字カーブを描き、頭の重さが背骨を通って足元へ流れる様子
頭の重さは、背骨のS字カーブを通って足元へ流れていきます
けんぞう先生
けんぞう先生みなみさん、背骨ってまっすぐな一本柱だと思っていませんか?
みなみ
みなみえ、違うんですか?「背筋をまっすぐ」ってよく言うから、てっきり…。
けんぞう先生
けんぞう先生実は、横から見ると背骨はゆるやかなS字カーブを描いているんです。腰のあたりは前に反って、背中のあたりは後ろにふくらんで、首のあたりはまた前に反る。「前・後ろ・前」のカーブですね。
みなみ
みなみへえ…!なんでわざわざカーブしてるんですか?まっすぐの方が丈夫そうなのに。
けんぞう先生
けんぞう先生このカーブが、天然のバネの役割をしているんです。歩くたび、動くたびの衝撃をカーブが吸収してくれる。そして何より、このS字カーブがあるからこそ、ボウリングの球ほどの頭を、筋肉に頼らず「骨で」支えられるんです。

これが「骨で支える身体」です。

骨が正しく積み上がっていれば、頭の重さは骨の柱を通って足元まで流れていきます。筋肉の出番は最小限。だから疲れにくいし、肩も首も悲鳴を上げません。

逆に言うと、この積み上げが崩れたとき、身体に何が起きるのか。ここからが本題です。

姿勢が崩れると、「筋肉で支える身体」になる

みなみ
みなみ積み上げが崩れるって、具体的にはどういうことですか?
けんぞう先生
けんぞう先生たとえば、スマホを見ている時の姿勢を思い浮かべてください。頭が前に出て、背中が丸くなっていませんか?
みなみ
みなみ…今まさにその姿勢でした。授乳中もパソコン作業中も、だいたいこの形かも。
けんぞう先生
けんぞう先生頭が前に出ると、頭の重さは骨の柱の真上から外れます。積み木のてっぺんが前にずれた状態ですね。そうなると、倒れないように誰かが引っ張って支えないといけない。その役目を押しつけられるのが、首や肩、背中の筋肉です。
みなみ
みなみ筋肉が、骨の代わりに頭を支えることになる…。
けんぞう先生
けんぞう先生そうです。しかも頭は前に出るほど、テコの原理で実際の何倍もの負担になると言われています。ボウリングの球を、腕を伸ばして持つのと、身体に引き寄せて持つのとでは、しんどさが全然違いますよね。あれと同じことが、首と肩で起きているんです。

ここで、この記事でいちばん覚えて帰ってほしい一文をお伝えします。

「骨で支える身体」が崩れると「筋肉で支える身体」になり、筋肉が休めなくなる。

筋肉は本来、動くための組織です。ところが姿勢が崩れると、立っている間も、座っている間も、ずっと頭を支える仕事を続けることになります。休憩なしの24時間営業です。

これが、肩こり・首こり・背中の張りの正体です。マッサージでほぐしてもらうと一時的に楽になるのに数日で戻ってしまうのは、筋肉が悪いのではなく、筋肉に仕事を押しつけている姿勢がそのままだから。原因が残っている限り、筋肉はまた固くなっていきます。

崩れの連鎖:背中→骨盤→首は、つながって崩れる

「私は首だけが悪いんです」「腰だけなんです」というご相談もよくいただきます。でも、施術の現場で身体を見せていただくと、崩れは一か所だけで起きていることの方がめずらしいんです。積み木ですから、一つ崩れれば上下も連動します。

よくあるパターンは、こんな連鎖です。

  1. 長時間の座り仕事やスマホで、背中が丸くなる
  2. 背中が丸くなると、土台の骨盤が後ろに倒れる
  3. 丸い背中の上でまっすぐ前を見ようとして、首の自然なカーブがなくなる(いわゆるストレートネック)
  4. 首のカーブを失った結果、頭がさらに前に出る
  5. 前に出た頭を、首・肩・背中の筋肉が一日中支え続ける
正しい姿勢と崩れた姿勢の骨格比較イラスト。崩れた姿勢では背中が丸くなり頭が前に出て、首から背中の筋肉に負担がかかっている
左が「骨で支える身体」、右が「筋肉で支える身体」。右は首〜背中の筋肉が一日中働き続けます
みなみ
みなみうわ…1から5まで、全部心当たりがあります。私、ストレートネックって健診で言われたことがあって、首だけの問題だと思ってました。
けんぞう先生
けんぞう先生首は「結果」として崩れていることが多いんです。だから首だけをどうにかしようとしても、背中と骨盤が丸いままなら、また同じところに戻っていきます。根っこから見る、というのはそういうことなんですね。

ちなみにこの連鎖は、日中だけの話ではありません。丸まった姿勢で眠るクセや枕の使い方によって、寝ている間に首のカーブの崩れが進みやすくなる、という視点もあります。このあたりは別の記事で詳しくお話ししています。

なぜ姿勢が崩れると、呼吸まで浅くなるのか

みなみ
みなみ先生、ちょっと話が変わるんですけど…私、ふと気づくと息が浅いというか、ため息が多いんです。これも姿勢と関係あります?
けんぞう先生
けんぞう先生大ありです。深呼吸を一つ、してみましょうか。まず背中を丸めた姿勢のままで、大きく息を吸ってみてください。
みなみ
みなみ(すー…)…あれ?なんか、途中でつっかえる感じがします。
けんぞう先生
けんぞう先生では今度は、背すじを軽く伸ばして、同じように吸ってみてください。
みなみ
みなみ(すーーー…)あ、全然違う!さっきより奥まで入ってきます。
背すじを伸ばして気持ちよさそうに深呼吸するみなみ
背すじを伸ばすと、息が胸の奥までたっぷり入ってきます
けんぞう先生
けんぞう先生今、身体で感じてもらった通りです。背中が丸くなると、肺を囲んでいる肋骨まわりが縮こまって、ふくらむスペースが狭くなるんです。風船を、狭い箱の中でふくらませようとしているようなものですね。

姿勢の崩れは、見た目の問題だけではありません。呼吸の深さに直結しています。

肋骨まわりが縮こまったままだと、一回一回の呼吸が浅くなります。浅い呼吸が一日中、そして毎日続く。本人はまったく自覚がないまま、身体は少しずつ「酸素をたっぷり取り込めない状態」「リラックスしにくい状態」に傾いていきます。

そしてこの「呼吸の浅さ」が、次にお話しする自律神経の話につながっていきます。

自律神経の切り替えと、背中の筋肉の意外な関係

自律神経という言葉は、聞いたことがある方が多いと思います。自分の意思とは関係なく、内臓や血管などの働きを調節してくれている神経で、大きく2つのモードがあります。

日中は活動モード、夜はお休みモード。この切り替えがスムーズにいくことが、心身の調子を保つうえでとても大切だと言われています。

みなみ
みなみその切り替えと、姿勢に何の関係があるんですか?
けんぞう先生
けんぞう先生実は、自律神経は背骨の背中側の近くを通っているんです。
みなみ
みなみえ、背中に?
けんぞう先生
けんぞう先生そうなんです。だから、背中を丸めた姿勢が続いて、背中まわりの筋肉がガチガチに硬くなると、自律神経のモードの切り替え、つまりスイッチングがうまくいきにくくなる、と私は施術の経験からも強く感じています。
横から見た骨格イラスト。背骨の背中側に沿って自律神経のラインが首から腰まで走っている
自律神経は背骨の背中側の近くを通っています。背中の筋肉が硬いと、この通り道を取り囲む環境が緊張したままになります
みなみ
みなみ背中が硬い人は、緊張モードから抜けにくいってことですか?
けんぞう先生
けんぞう先生そういう傾向がある、ということです。夜、布団に入っても身体がお休みモードに切り替わりきらず、緊張モードを引きずったまま。ご本人は「性格的に気を張りやすいのかな」と思っていても、身体の側から見ると、背中がずっと戦闘態勢だった、ということがよくあるんです。

姿勢の崩れ→背中の筋肉が休めない→硬くなる→お休みモードへの切り替えがうまくいきにくい。

さらに前の章でお話しした「呼吸の浅さ」も、身体を緊張モード側に傾けやすくします。深くゆっくりした呼吸が、身体をお休みモードに切り替える手助けをしてくれる、というのは、ヨガや深呼吸の習慣がある方なら実感があるかもしれませんね。

つまり、崩れた姿勢は、筋肉と呼吸の両方のルートから、身体を「休めないモード」に追い込んでいくんです。

だから「寝ても疲れが取れない」

みなみ
みなみ先生…ここまでの話、全部つながってきました。私の「寝ても疲れが取れない」って、もしかして…。
けんぞう先生
けんぞう先生そうです。ここまでの話が、そのまま答えになります。整理してみましょうか。

睡眠は本来、日中の活動で崩れた骨格と、溜まった筋肉の疲労をリセットするための時間です。身体がお休みモードに切り替わって、筋肉がゆるみ、深い眠りの中で回復が進む。これが理想の夜です。

ところが、「筋肉で支える身体」になっている方の夜は、こうなりがちです。

みなみ
みなみ寝てる時間はちゃんとあるのに、中身が「休めてない睡眠」になってるんですね…。
けんぞう先生
けんぞう先生そうなんです。だから「睡眠時間は足りてるはずなのに疲れが取れない」という不思議なことが起きる。時間の問題ではなく、眠りに入る前の身体の状態の問題だった、というケースが本当に多いんです。

そしてもうお気づきかもしれませんが、これが「枕を替えたのに眠れない」「高いマットレスにしたのに朝つらい」の答えでもあります。

寝具は、眠っている間の姿勢を支えてくれる道具です。とても大事な存在です。でも、眠りに入る前の身体がガチガチの緊張モードなら、どんな寝具もその緊張までは取り除けません。順番として、寝具の前に身体、なんです。

「寝具より先に身体」の、本当の意味

当サイト「カラダのねっこ」は、いつもこうお伝えしています。

「その不調、寝具のせいだけじゃないかもしれません。身体の状態を整えた上で、自分に合った環境を選ぶことが大切です。」

この記事を最後まで読んでくださったみなさんには、この一文の意味が、最初よりずっと具体的に見えているはずです。

誤解しないでいただきたいのは、私は寝具を否定していない、ということです。むしろ逆で、正しい骨格で眠りに入り、寝返りのしやすい環境をつくるうえで、自分に合った寝具はとても頼れる味方です。万人に必ず合う寝具はありませんから、最終的にはご自身の感じ方や好みで選んでいい。

ただ、順番があります。寝具は「身体を整えるもの」ではなく、「整った身体を支えるサポート役」。身体の状態が整ってはじめて、寝具の性能も本領を発揮します。

延べ4万5千人の睡眠の質と向き合ってきた私の率直な結論は、「寝具の見直しよりも先に、自分の身体の形から整えていく方を優先した方が良い人が、圧倒的に多い」ということです。当サイトの記事はすべて、この考え方の上に立っています。

みなみ
みなみ「カラダのねっこ」っていうサイト名の意味、今日やっと本当に分かった気がします。枝葉じゃなくて、根っこから見るんですね。
けんぞう先生
けんぞう先生その通りです。この記事を地図の真ん中に置いて、気になるテーマの記事を読み進めてもらえたら、全部がひとつの話としてつながっていくはずですよ。

こんな時は、まず医療機関へ

最後に、大切な注意点です。

こうした場合は、姿勢の話の前に、まず医療機関で検査を受けてください。骨や神経、内臓の病気など、医療の領域で対処すべき原因が隠れていることがあります。

まとめ

今日のお話をまとめます。

強い痛みやしびれなどがある場合は、まず医療機関での検査を優先してください。

検査で異常なしと言われたのに不調が続く方、そこからが当サイトの領域の出番です。あきらめる必要はありません。

その不調、寝具のせいだけじゃないかもしれません。身体の状態を整えた上で、自分に合った環境を選ぶことが大切です。


※この記事の内容は一般的な情報提供であり、診断や治療の代わりにはなりません。

執筆・監修:けんぞう先生(整体師/施術歴23年・延べ4万5千人)