姿勢・骨格

[#66]デスクワークの環境、何から整えればいい?椅子・モニター・スマホの優先順位

デスクワーク環境の優先順位

文=けんぞう(美容整体師・小顔矯正士/施術歴13年・延べ2万7千人以上)

みなみ
みなみ先生、正直に相談させてください。在宅ワーク用に椅子を買い替えて、ノートパソコンの下に台も置いて、それでも夕方になると肩がガチガチなんです。環境、けっこう整えたつもりなんですけど。
けんぞう先生
けんぞう先生その頑張り、無駄にはなっていません。椅子も台も、ちゃんと考えて選ばれたはずです。ただ、僕はここではっきり言いたいことがあって。「何を揃えたか」より「どの順番で整えたか」の方が、実は大事なんです。
みなみ
みなみ順番、ですか。全部同時に整えたつもりでした。
けんぞう先生
けんぞう先生もしかしたらそれが、うまくいきにくい原因かもしれません。今日は、デスクワーク環境を整えるときの優先順位を、はっきりお伝えします。

結論:全部同時じゃなくていい。優先順位がある

けんぞう先生
けんぞう先生先に結論です。優先順位は、①骨盤・座り方の土台→②画面の高さ→③スマホの持ち方、この順番です。
みなみ
みなみ椅子とかモニターとか、道具から考えがちでした。
けんぞう先生
けんぞう先生そこなんです。道具は土台の上に乗せるものです。土台がないまま良い道具を足しても、力を発揮しきれません。

優先順位①:骨盤——土台がなければ何も始まらない

けんぞう先生
けんぞう先生一番最初に整えるべきは、椅子の性能でもモニターの高さでもなく、骨盤の角度を意識した座り方です。
みなみ
みなみどんな椅子に座るかより先に、ということですか?
けんぞう先生
けんぞう先生はい。骨盤が後ろに倒れていると、その上の背中は丸くなり、頭は前に出ます。どんなに高性能な椅子でも、骨盤の座り方そのものは椅子が自動で直してくれるわけではないんです。良い椅子、値段の高い椅子に座れば自動的に姿勢が良くなる、というわけではありません。道具はあくまで、自分がいい姿勢で座りやすくするための補助なんです。この認識を持っておくだけで、椅子選びの見方が変わってくると思います。
みなみ
みなみ椅子を買い替えても、座り方がそのままだと意味が薄いんですね。
けんぞう先生
けんぞう先生薄いというより、順番が逆なんです。まずお尻を椅子の奥までしっかり入れて、坐骨が座面に垂直に立つイメージ。厚生労働省のガイドラインでも「椅子に深く正しく座り、足の裏全体が床に接するように」とされていて、この足裏の設置も骨盤を立てる助けになります。骨盤が立つと、背骨のS字カーブが戻りやすくなって、頭が骨の上に乗りやすくなります。これができて初めて、椅子の性能が活きてきます。
みなみ
みなみ骨盤が整ってから、次は何を見ればいいですか?
けんぞう先生
けんぞう先生はい、次は画面の高さです。ただ、その前に一つだけ、椅子選びについても触れておかせてください。高い椅子を買えば骨盤が自動で立つ、と思われがちなんですが、実はそうではないんです。
みなみ
みなみ椅子は関係ないんですか?
けんぞう先生
けんぞう先生関係はありますが、順番が逆になりやすいんです。座面の奥行きが自分の太ももより長すぎると、深く座ったときに膝の裏が圧迫されて、結局浅く腰かけることになります。逆に、背もたれが柔らかすぎると、骨盤を立てて座っても、もたれた瞬間に後ろに倒れてしまいます。
みなみ
みなみ良い椅子でも、座り方次第で台無しになるんですね。
けんぞう先生
けんぞう先生そうなんです。椅子を選ぶときは、まず今の椅子で骨盤を立てて座る感覚を掴んでから、「この座り方を邪魔しない椅子か」という視点で見てほしいんです。高機能かどうかより、自分の座り方を整えることで、椅子の性能を最大限活かすという順番が基準になります。
みなみ
みなみ買う前に、まず座り方を知っておくということですね。
けんぞう先生
けんぞう先生はい。それができて初めて、画面の高さの話が活きてきます。

優先順位②:画面の高さ——モニターがある人、ノートPCだけの人

けんぞう先生
けんぞう先生骨盤が整っても、画面が低ければ、頭はまた数分で前に出ます。ここが二番目に大事なポイントです。
みなみ
みなみうちはノートパソコンだけなんですけど、それでも大丈夫ですか?
けんぞう先生
けんぞう先生ノートパソコンだけの方は、まず本や箱で底上げしてください。画面の上端が目の高さか、そのすこし下に来るのが目安です。ただし、そうすると今度はキーボードの位置が上がりすぎるので、外付けのキーボードを併用するのがおすすめです。もう一つの方法として、画面部分だけを斜めに持ち上げるタイプのPCスタンドを使う手もあります。このタイプなら、画面は目線の高さまで上がりつつ、キーボードは手元の低い位置のまま使えるので、外付けキーボードを別に用意しなくても済みます。
みなみ
みなみ外付けモニターがある場合は、どう違うんですか?
けんぞう先生
けんぞう先生モニターがある方には、もう少し詳しくお話しできます。ここ、実はあまり語られていない部分なので、丁寧にいきますね。
みなみ
みなみお願いします。
けんぞう先生
けんぞう先生まず高さです。モニターアームやスタンドを使う場合、画面の上端が目の高さ、または少し下に来るように調整してください。多くの方は逆で、画面の中央を目の高さに合わせてしまうんです。
みなみ
みなみ中央だと、どうなるんですか?
けんぞう先生
けんぞう先生画面の中央を目の高さに合わせると、画面の上半分を見るときは軽く見上げて、下半分を見るときは軽く見下ろす。この「見上げる」と「見下ろす」を、一日に何百回と往復し続けることになります。
みなみ
みなみ上端に合わせても、下の方を見るときは結局下を向きますよね?
けんぞう先生
けんぞう先生そこ、実は誤解されやすいところなんです。首がまっすぐ楽な状態のとき、視線はもともと自然にわずかに下を向いています。首を傾けているわけではなく、眼球そのものがその角度を向いているんです。画面の上端を目の高さに合わせるのは、この「首を動かさなくても、眼球の自然な動きだけで画面全体を見渡せる」位置に置く、という意味なんです。
みなみ
みなみ首は動かさずに、目だけで見る感じですか。
けんぞう先生
けんぞう先生そうです。逆に、画面の中央を目の高さに合わせると、画面の上半分は眼球だけでは届く範囲を超えてしまうので、それを見るために首そのものを後ろに反らすことになります。首を後ろに反らす動きは、負担が大きいとされているので、そこが問題なんです。
みなみ
みなみそんな細かい違いが影響するんですね。
けんぞう先生
けんぞう先生はい。次に距離です。画面までの距離は、腕を伸ばした長さ程度、だいたい40〜70cmが目安です。厚生労働省のガイドラインでも、画面までの距離は40cm以上、画面の上端は目の高さまで、という基準が示されているので、これは僕の個人的な感覚ではなく、公的な指針とも一致しています。近すぎると、画面の端まで見ようとして頭が左右に動き続けますし、無意識に頭が前に出やすくなります。逆に遠すぎると、文字が見えづらくて前のめりになります。
みなみ
みなみ近すぎても遠すぎてもダメなんですね。
けんぞう先生
けんぞう先生そうです。それと、複数モニターを使っている方への注意点もあります。メインで使う画面を正面に、サブモニターは首を大きく振らなくても視界に入る角度に配置してください。よく見かけるのが、メインとサブを左右均等に並べて、首を大きく左右に振り続けている状態です。
みなみ
みなみうちもそうです……。
けんぞう先生
けんぞう先生使用頻度が高い方を正面、補助的に使う方を斜めに置くだけで、首の負担はかなり変わります。
みなみ
みなみノートパソコンの場合は、モニターと同じように考えていいですか?
けんぞう先生
けんぞう先生基本の考え方は同じですが、注意点が一つ増えます。ノートパソコンを本や箱で底上げすると、画面は目の高さに近づきますが、キーボードとトラックパッドも一緒に上がってしまうんです。
みなみ
みなみそれは気づいてませんでした。
けんぞう先生
けんぞう先生キーボードの位置が高くなると、今度は肩がすくんで、腕を持ち上げたまま作業することになります。せっかく首の負担を減らしても、肩に負担を移しているだけになりかねません。だから、画面を底上げする場合は、外付けのキーボードとマウスをセットで用意することを強くおすすめします。
みなみ
みなみ画面だけ直しても、片手落ちになるんですね。
けんぞう先生
けんぞう先生そうなんです。画面の高さ・距離・キーボードの位置、この3つはワンセットで考えてください。

優先順位③:スマホの持ち方——道具に頼る場面

けんぞう先生
けんぞう先生骨盤と画面の高さが整ったら、最後にスマホです。デスクワークの合間や休憩中のスマホ姿勢も、実は同じ理屈で負担を作っています。
みなみ
みなみ休憩中についスマホを見ちゃいます。
けんぞう先生
けんぞう先生それ自体は自然なことです。ただ、胸の高さで見ていると、うつむく角度がついて、せっかく整えた骨盤・画面の姿勢が数分で崩れます。まずは無料でできることとして、スマホを顔の高さまで持ち上げる、持つ手の肘を反対の手で支える。これだけでも変わります。
みなみ
みなみそれでも続かない場合は?
けんぞう先生
けんぞう先生そこで初めて、道具の出番です。床置きの三脚型スタンドなら、座っていても目線の高さにスマホを固定できます。ここは意識で頑張るより、環境で解決した方が確実だと僕は考えています。
みなみ
みなみ休憩中にスマホを見ること自体は、悪いことじゃないんですよね?
けんぞう先生
けんぞう先生もちろんです。休憩は必要ですし、スマホでリフレッシュすること自体を否定するつもりはありません。ただ、休憩の姿勢が、次の作業への「持ち越し」になっていないかは見てほしいんです。
みなみ
みなみ持ち越し、というのは?
けんぞう先生
けんぞう先生休憩中にうつむいた姿勢で固まった首や肩は、そのまま次の作業に戻っても、すぐには元に戻りません。せっかくの休憩時間が、逆に負担を上乗せする時間になってしまうことがあるんです。だからこそ、休憩中のスマホ姿勢にも、①②と同じ考え方を当てはめてほしいんです。

【早見表】状況別・見直すべき順番

みなみ
みなみここまでの話、整理してもらえますか?
けんぞう先生
けんぞう先生もちろんです。
けんぞう先生
けんぞう先生
  • 骨盤が立てられているか自信がない:まず①から。椅子やモニターを見直す前に座り方を確認
  • 座り方は意識しているのに肩がこる:②を確認。画面の高さ・距離、キーボードの位置
  • 骨盤も画面も整えたのに、休憩中だけ肩がこる:③のスマホの持ち方・スタンドを検討
  • 全部整えたのに変わらない:1時間ごとの「1分リセット」ができているか確認。同じ姿勢を動かさないこと自体が負担になる
みなみ
みなみ私はまず①からやり直します。
けんぞう先生
けんぞう先生それが一番の近道だと思います。

みなみさんの場合で当てはめると

みなみ
みなみ私の環境で、具体的にどこから手をつければいいか、一緒に考えてもらえますか。ノートパソコン一台で、リビングのダイニングテーブルで作業していて、抱っこしながらスマホを見ることも多いです。
けんぞう先生
けんぞう先生いいですね、具体的に見ていきましょう。
けんぞう先生
けんぞう先生
  • ダイニングテーブル+ノートパソコン:テーブルの高さが合っていても、椅子が合っていないケースが多いです。まず骨盤を立てて座れているか、坐骨が座面に垂直に立つ感覚があるかを確認
  • ノートパソコンの画面が低い:本や雑誌を積んで底上げし、外付けキーボードを用意する。ダイニングテーブルなら、来客用のクッションを座面に敷いて高さを調整するのも一つの方法
  • 抱っこしながらのスマホ:赤ちゃんを片腕で支えながらだと、どうしても反対の手だけでスマホを操作しがちです。この場合は三脚型スタンドを使うより、抱っこの姿勢そのものを見直す方が優先度が高いこともあります
みなみ
みなみ抱っこしながらのスマホは、また別の話になるんですね。
けんぞう先生
けんぞう先生はい。抱っこ中の姿勢については、別の記事で詳しくお話ししています。今日の優先順位(骨盤→画面→スマホ)は、椅子に座って作業する時間に当てはめてもらって、抱っこ中は抱っこの姿勢を優先してください。場面ごとに、当てはめる優先順位が変わってくるということです。
デスクワーク環境の3つのチェックポイント図解

なぜ「骨盤が先」なのか、もう一度だけ

みなみ
みなみ最後にもう一つだけ聞きたいんですけど、なんで椅子やモニターより先に、骨盤なんでしょう。道具の方が変えやすい気がして。
けんぞう先生
けんぞう先生すごくいい質問です。理由は、当サイトでいつもお伝えしている「骨で支える身体」の考え方に戻ります。人間の頭は、ボウリングの球ほどの重さがあって、本来は背骨のS字カーブに乗せて、骨で支えるようにできています。
みなみ
みなみ骨盤が土台にある、という話でしたよね。
けんぞう先生
けんぞう先生そうです。骨盤が後ろに倒れると、その上の背骨のカーブが崩れて、頭を骨で支えられなくなります。すると、代わりに首や肩の筋肉が、頭を吊り続けることになる。ここがすべての出発点なんです。
みなみ
みなみモニターを上げても、骨盤が崩れたままだと……。
けんぞう先生
けんぞう先生頭を支える土台自体が崩れているので、画面をどれだけ良い位置に置いても、身体はまた別のところで無理をします。ここ、僕がこの記事で一番伝えたかったことなんです。道具は、あくまで整った土台の上に乗せる仕上げでしかない。土台を飛ばして仕上げだけ整えても、身体は正直で、必ずどこかにしわ寄せがいきます。だからこそ、変えやすいところからではなく、根っこの骨盤から見てほしいんですよ。

こんな時は、まず医療機関へ

次のような場合は、環境の見直しより先に、医療機関で検査を受けてください。

これらは医療機関で検査を受けるべき状態です。

まとめ

けんぞう先生
けんぞう先生今日のポイントをまとめます。
けんぞう先生
けんぞう先生環境を整えようとするその頑張り自体は、本当に良いことです。ただ、順番を間違えると、その頑張りが正しく報われません。今日の順番で、一つずつ見直してみてください。

強い痛みやしびれがある場合は、まず医療機関を受診してください。検査で異常なしと言われたのに不調が続く方、そこからが当サイトの領域の出番です。あきらめる必要はありません。

その不調、寝具のせいだけじゃないかもしれません。身体の状態を整えた上で、自分に合った環境を選ぶことが大切です。


執筆・監修:けんぞう先生(整体師/施術歴13年・延べ2万7千人以上)

※この記事の内容は一般的な情報提供であり、診断や治療の代わりにはなりません。

よくある質問

Q. 椅子は良いものを買った方がいいですか?

椅子の性能を否定するものではありませんが、骨盤の座り方が整っていない状態で高機能な椅子に座っても、力を発揮しきれないことがあります。まず座り方を意識した上で、椅子を検討することをおすすめします。

Q. モニターアームは必要ですか?

必須ではありませんが、高さと距離を微調整しやすくなる点で便利です。本や箱での底上げでも、目線の高さと距離の目安(40〜70cm)が満たせていれば、まずはそれで十分です。

Q. 全部整えたのに、まだ肩がこります。

姿勢が整っていても、同じ姿勢を長時間動かさないこと自体が負担になります。1時間に1回、立つ・胸を開く・深呼吸をする「1分リセット」を試してみてください。

Q. 在宅ワークとオフィスワーク、優先順位は変わりますか?

基本的な優先順位(骨盤→画面→スマホ)は変わりません。ただし、オフィスの椅子やデスクは自由に変えにくいことが多いため、まず①の座り方と③のスマホの持ち方から取り組むのが現実的です。