姿勢・骨格

[#61]産後の骨盤ケア、何から始める?ベルト・体操・専門的なケアの使い分けを整体師が整理

布団で膝を立てお腹に手を当てるみなみと赤ちゃん

文=けんぞう(美容整体師・小顔矯正士/施術歴13年・延べ2万7千人以上)

みなみ
みなみ先生、産後の骨盤の話、聞いてもいいですか。末っ子がもうすぐ1歳なんですけど、出産直後に買った骨盤ベルトを、正直ちゃんと使いこなせないまま今に至ってて。今からでも巻いた方がいいのか、体操がいいのか、それとも専門のところに行った方がいいのか、何が正解か分からなくて。
けんぞう先生
けんぞう先生それ、産後のお母さんから本当によく聞く相談です。そして僕は、この質問に「正解は一つじゃない」と答えたいんです。
みなみ
みなみえ、また夢のない……。
けんぞう先生
けんぞう先生いえ、逆です。ベルト・体操・専門的なケア、この3つは「どれが正解か」ではなく「役割が違う」んです。役割が分かれば、今の自分に何が必要かが見えてきます。今日は、僕が施術の現場で産後の方を見てきた実感をもとに、はっきり整理しますね。

先に結論:ベルト・体操・専門的なケアは「役割が違う」

けんぞう先生
けんぞう先生先に結論を言います。3つの役割はこうです。
けんぞう先生
けんぞう先生
  • ベルト:自分の筋肉が戻るまでの間、外から「支える」道具
  • 体操:自分の筋肉で「支える力を取り戻す」ための取り組み
  • 専門的なケア:セルフで戻りにくい状態を、身体の構造から見てもらう選択肢
みなみ
みなみベルトは「戻す」道具じゃないんですか?
けんぞう先生
けんぞう先生ここ、いちばん誤解が多いところなので、はっきり言わせてください。ベルトは「戻す」道具ではなく「支える」道具です。巻いている間は楽になるけれど、外した瞬間に元通り、という経験をした方は多いと思います。それは道具が悪いのではなく、役割が「支える」だからなんです。
みなみ
みなみじゃあ、ずっと巻き続ければいいってことでもない?
けんぞう先生
けんぞう先生そうです。支えてもらっている間に、自分の筋肉で支える力を取り戻す。それが体操の役割です。この二つはセットで考えてください。

大前提:産後の身体は、まず医療の確認が先

けんぞう先生
けんぞう先生具体的な話に入る前に、どうしても先に言っておきたいことがあります。産後の身体は、医療の領域と隣り合っています。
みなみ
みなみ産後健診のことですか?
けんぞう先生
けんぞう先生はい。悪露の状態、帝王切開の傷の回復、産後健診での医師の判断。これらが最優先です。僕たちのような手技によるケアや体操の話は、医師から「日常生活に戻って大丈夫」と言われたあとの話だと思ってください。
みなみ
みなみ産後すぐにベルトを巻くのは?
けんぞう先生
けんぞう先生産院で指導を受けた範囲であれば構いません。ただ、自己判断で強く締めたり、傷に当たる位置で巻いたりするのは避けてください。ここは僕の領域ではなく、医療の領域です。正直に線を引いておきます。

役割①:ベルト——「支える」道具として、期間を区切って使う

けんぞう先生
けんぞう先生産後は、ホルモンの影響で骨盤まわりの靭帯がゆるみやすい状態にあります。そこに、妊娠中に伸びた腹筋の支える力が落ちている。つまり「骨盤まわりが不安定で、それを支える筋肉も弱っている」状態です。
みなみ
みなみだから、ベルトで外から支えるんですね。
けんぞう先生
けんぞう先生そうです。特に抱っこや授乳で腰に負担がかかる時期には、ベルトが支えになります。ただし僕が強くお伝えしたいのは、「期間を区切る」こと。ベルトに頼り続けると、自分の筋肉が支える出番がなくなってしまうんです。
みなみ
みなみ具体的にはどう使えばいいですか?
けんぞう先生
けんぞう先生「長時間の抱っこ」「家事で立ちっぱなし」など、負担が大きい場面で使う。座って休んでいる時や、体操をする時は外す。「常時装着」ではなく「場面で使う」——これが僕の考える、ベルトとの付き合い方です。選び方の詳細は、別の記事で整理しています。

役割②:体操——自分の筋肉で支える力を取り戻す

みなみ
みなみ体操って、何をすればいいんですか?産後って、腹筋が全然力入らなくて。
けんぞう先生
けんぞう先生その感覚、正しいです。妊娠中に伸びた腹筋は、すぐには元の支える力に戻りません。だから最初から強い腹筋運動をする必要はないし、むしろ避けてほしい。
みなみ
みなみじゃあ、何から?
けんぞう先生
けんぞう先生まずは「呼吸」です。仰向けで膝を立てて、鼻から吸って、口からストンと脱力しながら吐き切る。吐き切るときに、お腹の奥がじんわり縮む感覚を探す。これが、産後に最初に取り戻したい「お腹の奥で支える感覚」なんです。
みなみ
みなみ深呼吸が体操になるんですね。
けんぞう先生
けんぞう先生はい。ここは僕がいちばん伝えたいところなんですが、産後の体操は「頑張る」ものではなく「感覚を思い出す」ものです。強い運動よりも、お腹の奥が働く感覚を毎日少しずつ取り戻す方が、結果的に骨盤まわりの安定につながりやすいんです。
みなみ
みなみ寝かしつけのあとに、布団の上でできそうです。
けんぞう先生
けんぞう先生それで十分です。授乳や抱っこの合間に、数回ずつでいい。ベルトで支えてもらいながら、自分で支える力を育てていく。この並行が大事です。

役割③:専門的なケア——セルフで戻りにくい時の選択肢

けんぞう先生
けんぞう先生ベルトと体操を続けても、腰の重さや骨盤まわりの違和感が何ヶ月も変わらない。そういう方も、実際にいらっしゃいます。
みなみ
みなみそういう時はどうすれば?
けんぞう先生
けんぞう先生順番があります。まず、痛みやしびれが強い場合は医療機関へ。検査で異常が見つからないのに不調が続く場合、身体の構造に詳しい専門家に、骨盤や姿勢の状態を見てもらうのは一つの選択肢です。
みなみ
みなみ産後は「骨盤矯正」ってよく見かけますけど……。
けんぞう先生
けんぞう先生ここは正直に言います。産後の身体は、骨盤だけを見ても足りないことが多いんです。妊娠中の反り腰、産後の腹筋の弱り、授乳期の猫背——この三つが合体している方が本当に多い。骨盤だけ整えても、猫背と反り腰が残っていれば、また戻ります。だから専門的なケアを選ぶなら、「骨盤だけ」ではなく「全身の形」を見てくれるところを選んでください。

体操の具体例——「頑張らない」3つの動き

みなみ
みなみ呼吸から始めるのは分かりました。その先って、何をすればいいですか?
けんぞう先生
けんぞう先生3つだけ紹介します。全部「頑張らない」動きです。ここ、正直に言わせてください。産後に頑張る腹筋運動から始めて、腰を痛めてしまう方を、僕は何人も見てきました。だから、あえて地味なものから。
けんぞう先生
けんぞう先生【産後に取り戻したい3つの感覚】
  1. 吐き切る呼吸(毎日の土台):仰向けで膝を立て、鼻から吸って、口からストンと脱力しながら吐き切る。吐き切った時にお腹の奥がじんわり縮む感覚を探す。5回
  2. 骨盤をゆっくり傾ける:同じ姿勢で、腰と床のすき間をゆっくり埋めたり、少し空けたりを繰り返す。動きは小さく、勢いをつけない。10回
  3. 横向きで脚をゆっくり上げ下ろしする:横向きに寝て膝を軽く曲げ、かかとをつけたまま上の脚をゆっくり持ち上げて下ろす。膝を持ち上げるというより、太ももの横の筋肉で脚を持ち上げて下ろす感覚を意識する。お尻の横から太ももの横がじんわり働く感覚を探す。左右10回
みなみ
みなみどれも、寝かしつけのあとに布団の上でできそうです。
けんぞう先生
けんぞう先生それで十分なんです。ここ、僕がいちばん伝えたいところなんですが、産後の体操は「回数」より「感覚」です。お腹の奥やお尻の横が「働いている」と感じられる日が増えてくると、ベルトなしでも支えられている感覚が少しずつ戻ってきます。
みなみ
みなみ感覚が戻るのが先で、ベルトを外すのはその後、なんですね。
けんぞう先生
けんぞう先生その順番です。感覚が戻る前にベルトだけ外すと、腰に負担が集中します。並行して、少しずつ。

抱っこの姿勢も、骨盤ケアの一部——そして、抱っこひもについて正直に

けんぞう先生
けんぞう先生もう一つ、見落とされがちな話をします。産後の骨盤ケアは、体操の時間だけの話ではないんです。1日の大半を占める「抱っこの姿勢」が、実は骨盤に一番影響しています。
みなみ
みなみ抱っこ、一日中してます……。
けんぞう先生
けんぞう先生縦抱っこは片側の肩・腕に負担が集中して左右差が出やすく、横抱っこは背中が丸まって骨盤が後ろに倒れやすい。どちらも、骨盤まわりの安定にとっては負担になります。「疲れる前に左右を替える」——まずこれを意識してください。
みなみ
みなみ抱っこひもを使えば、少しは楽になりますか?
けんぞう先生
けんぞう先生ここは、僕の考えを正直にお伝えします。僕は基本的に、抱っこひも・おんぶひもを積極的にはおすすめしていません。特に、赤ちゃんの首が座って縦抱っこになってからは。
みなみ
みなみえ、みんな使ってますよね……。
けんぞう先生
けんぞう先生使っている方が多いのは分かっています。それでもあえて言う理由が二つあります。一つは赤ちゃん側。抱っこひもの中にいると、赤ちゃんが自分でお母さんの身体に掴まることを覚えにくく、「抱っこひもの中でしか寝なくなる」ことがあるんです。
みなみ
みなみもう一つは?
けんぞう先生
けんぞう先生お母さん側です。抱っこひもがあると、身体の限界を超えて抱っこし続けられてしまう。本来なら「もう無理」と腕が言ってくれるところを、道具が肩代わりしてしまうんです。ここ、僕が施術の現場で本当に強く感じていることなんですが、骨格や体型の崩れの大半は、妊娠や出産そのものよりも、この時期の「限界を超えた抱っこの積み重ね」で起きていると思っています。
みなみ
みなみ出産よりも、そのあとの抱っこなんですか……。
けんぞう先生
けんぞう先生そうです。骨盤ベルトの話と同じなんですよ。「支える道具」に頼りすぎると、自分で支える力が育たない。抱っこひもは、まさにその道具なんです。
みなみ
みなみでも、泣き声がご近所に響くのが気になって、抱っこひもで揺らし続けちゃう日もあります。
けんぞう先生
けんぞう先生その現実も、よく分かります。外出時や、どうしても泣き止まない時、使わざるを得ない場面はある。だから「使うな」とは言いません。もし使うのであれば、という前提で、二つだけお願いしたいんです。
けんぞう先生
けんぞう先生【抱っこひもを使うなら】
  • 腰ベルトを骨盤にしっかり乗せる:腰ベルトが骨盤に乗っていると、体重が腰で支えられて、肩と腰の両方の負担が減る。緩いと全部の重さが肩にかかる
  • 時間を区切る:「便利だから」で長時間続けない。道具があっても、身体の限界は変わらない
みなみ
みなみ使うなら「正しく、短く」なんですね。
けんぞう先生
けんぞう先生そういうことです。道具に支えてもらう時間と、自分の身体と赤ちゃんの力で抱っこする時間。そのバランスを、意識してもらえたら嬉しいです。

時期別の目安——あくまで目安、医師の指示が優先

みなみ
みなみ産後どれくらいから、何をすればいいか、目安ってありますか?
けんぞう先生
けんぞう先生あくまで目安として、そして必ず医師の指示を優先するという前提でお話しします。
けんぞう先生
けんぞう先生
  • 産後すぐ〜産後健診まで:安静と医療の確認が最優先。ベルトは産院の指導範囲で
  • 医師から日常生活OKと言われた後:呼吸から始める体操を少しずつ。負担が大きい場面でベルトを使う
  • 数ヶ月経っても違和感が続く:医療機関で確認のうえ、異常なしなら専門的なケアも選択肢に
みなみ
みなみ私、末っ子がもうすぐ1歳なんですけど、今からでも意味ありますか?
けんぞう先生
けんぞう先生あります。産後の時期が過ぎても、腹筋の支える感覚を取り戻す取り組みは、いつ始めても遅くありません。ただ、1年近く経って違和感が残っているなら、一度、身体の形を専門家に見てもらう価値はあると思います。ここは正直に、そうお伝えします。

【早見表】産後の骨盤ケア、役割と使いどころ

手段役割使いどころ注意点
ベルト外から支える抱っこ・立ち仕事など負担が大きい場面常時装着しない。産院の指導範囲で
体操(呼吸から)自分で支える力を取り戻す医師のOK後、毎日少しずつ強い腹筋運動から始めない
専門的なケア構造から見てもらうセルフで戻りにくい時、医療で異常なし後骨盤だけでなく全身を見るところを
みなみ
みなみ3つの役割が、やっと整理できました。
けんぞう先生
けんぞう先生「どれか一つ」ではなく「役割で組み合わせる」。これが、産後の骨盤ケアで僕がいちばん伝えたい考え方です。

家族に「これだけ」協力してもらいたいこと

みなみ
みなみ正直、自分のケアの時間なんて、なかなか取れないんですよね。
けんぞう先生
けんぞう先生その現実、よく分かります。だから最後に、産後のお母さん本人ではなく、パートナーやご家族に向けてお願いしたいことを、3つだけ書かせてください。
けんぞう先生
けんぞう先生【家族にお願いしたい3つのこと】
  • 抱っこを交代する:長時間の抱っこは骨盤と腰への負担そのもの。「疲れたら」ではなく「時間で」交代する
  • 1日5分、体操の時間を作る:寝かしつけの後でも、朝でもいい。お母さんが布団の上で呼吸と骨盤の動きをする5分を、家族が守る
  • 「まだ戻らないの?」と言わない:産後の身体は、数ヶ月単位で変わり続けます。焦らせる言葉は、緊張を増やすだけです
夫が赤ちゃんを抱き娘の手を引く、奥でみなみが体操
みなみ
みなみ3つ目、刺さります……。
けんぞう先生
けんぞう先生ここは、僕が施術の現場で一番言いたかったことかもしれません。産後の骨盤ケアは、お母さん一人の頑張りではなく、家族の協力があってはじめて続きます。この記事を、そのままご家族に見せてもらっても構いません。

こんな時は、まず医療機関へ

次のような場合は、セルフケアや専門的なケアの前に、必ず医療機関を受診してください。

これらは医療機関で検査を受けるべき状態です。産後の身体は医療の領域と隣り合っています。少しでも気になることがあれば、産後健診や産科への相談を優先してください。

まとめ

けんぞう先生
けんぞう先生今日のポイントをまとめます。
けんぞう先生
けんぞう先生産後のお母さんは、自分のことを後回しにしがちです。でも、支える力を取り戻すことは、これから何年も続く抱っこと家事を、少しでも楽にするための投資だと僕は思っています。焦らず、順番を守って、一つずつ。

強い痛みやしびれがある場合は、まず医療機関を受診してください。検査で異常なしと言われたのに不調が続く方、そこからが当サイトの領域の出番です。あきらめる必要はありません。

その不調、寝具のせいだけじゃないかもしれません。身体の状態を整えた上で、自分に合った環境を選ぶことが大切です。


執筆・監修:けんぞう先生(整体師/施術歴13年・延べ2万7千人以上)

※この記事の内容は一般的な情報提供であり、診断や治療の代わりにはなりません。

よくある質問

Q. 骨盤ベルトはいつまで使えばいいですか?

「いつまで」という一律の期限はありません。負担が大きい場面で支えとして使い、体操で自分の筋肉の支える感覚が戻ってきたら、少しずつ使う場面を減らしていくのが目安です。産院で指導を受けている場合は、その指示を優先してください。

Q. 産後1年以上経っていますが、今から体操を始めても意味がありますか?

あります。お腹の奥で支える感覚を取り戻す取り組みは、いつ始めても遅くありません。ただし、長く違和感が残っている場合は、一度、身体の形を専門家に見てもらうことも検討してみてください。

Q. 骨盤矯正に行けば、産後の不調は良くなりますか?

産後の身体は骨盤だけでなく、反り腰・腹筋の弱り・猫背が重なっていることが多いため、骨盤だけを見ても足りないことがあります。専門的なケアを選ぶ場合は、全身の形を見てくれるところを選ぶことをおすすめします。効果を保証するものではないことも、正直にお伝えしておきます。

Q. 帝王切開でしたが、同じように考えていいですか?

傷の回復が最優先です。医師から日常生活の許可が出るまでは、ベルトの位置や体操の開始時期を含めて、必ず産科の指示に従ってください。