[#24]反り腰なのに猫背?産後の身体で起きる「姿勢の合体」を整体師が解説
こんにちは、整体師のけんぞうです。
姿勢を良くしようと思って背筋を伸ばすと、反り腰がひどくなる。じゃあ反り腰を戻そうと思うと、今度は背中が丸くなってしまう。……私の姿勢、結局どっちなの?
施術の現場で、産後のお母さんからよく聞く行き詰まりです。結論から言うと、どちらも正解。正反対に見える「反り腰」と「猫背・巻き肩」は、ひとつの身体の中に同居します。だから片方だけ直そうとすると、もう片方が顔を出す。むしろ産後の身体では、この「合体」こそが典型パターン。感覚としては、産後の方の3人に1人くらいはこの状態に心当たりがあるはずです。
今日は、なぜこんなことが起きるのか、そしてこの姿勢が睡眠まで巻き込んでいく流れを、施術歴23年・延べ4万5千人の身体と向き合ってきた立場からお話しします。
姿勢を良くしようと思って背筋を伸ばすと、反り腰がひどくなる。じゃあ反り腰を戻そうと思うと、今度は背中が丸くなってしまう。……私の姿勢、結局どっちなの?
施術の現場で、産後のお母さんからよく聞く行き詰まりです。結論から言うと、どちらも正解。正反対に見える「反り腰」と「猫背・巻き肩」は、ひとつの身体の中に同居します。だから片方だけ直そうとすると、もう片方が顔を出す。むしろ産後の身体では、この「合体」こそが典型パターン。感覚としては、産後の方の3人に1人くらいはこの状態に心当たりがあるはずです。
今日は、なぜこんなことが起きるのか、そしてこの姿勢が睡眠まで巻き込んでいく流れを、施術歴23年・延べ4万5千人の身体と向き合ってきた立場からお話しします。
もくじ
背筋を伸ばすと反り腰、腰を戻すと猫背になる謎
みなみけんぞう先生、私ずっとモヤモヤしてたことがあって。姿勢を良くしようと思って背筋をピンと伸ばすと、腰の反りがキツくなる感じがするんです。で、反り腰が気になって腰を戻すと、今度は背中が丸まっちゃって。どっちかを直すと、どっちかが崩れる。私の姿勢、結局どっちが問題なんですか?
けんぞう先生そのジレンマ、すごくよく分かります。そして答えは「どっちも」なんです。身体をひとつの棒だと思うから混乱するんですよ。背骨は首・背中・腰と続く長いパーツで、場所ごとに別々のことが起きられる。腰は反ったまま、その上の背中は丸くなる。これが同時に成立するんです。だから片方だけを動かすと、もう片方にしわ寄せが行く。
みなみ腰と背中で、別のことが起きてる…。
けんぞう先生そうです。そしてこの組み合わせが作られる過程には、はっきりしたストーリーがあります。妊娠から産後にかけての、身体の歴史です。順番に見ていきましょう。
第1章・妊娠中に作られる「反り腰」
けんぞう先生まず妊娠中。お腹が前に大きくなっていくと、身体の重心はどんどん前に引っ張られます。そのまま何もしなければ前に倒れてしまうので、身体はバランスを取るために上体を後ろに反らせる。骨盤は前に倒れ、腰の反りが強くなる。これが妊娠中に作られる反り腰です。しかも、お腹の筋肉は赤ちゃんの成長とともにどんどん引き伸ばされていくので、腹筋は壊滅的な状態。すると、伸びきったお腹側の代わりに背中側——腰まわりの筋肉が縮んで頑張り続けることになり、反り腰から抜け出せなくなる。この流れです。
みなみたしかに妊娠後期、腰を反らせて歩いてました。お腹を突き出すみたいな感じで。
けんぞう先生それが自然な適応なんです。悪いことではなく、赤ちゃんを守るために身体が選んだバランスの取り方。問題は、出産してお腹が元に戻っても、腰の反りのクセは自動では戻らないということです。約10か月かけて作られた姿勢のクセは、身体にしっかり記憶されています。
第2章・産後に重なる「猫背・巻き肩」
けんぞう先生そして産後。今度は上半身に、新しい負荷が始まります。みなみさん、1日のうち、赤ちゃんを抱っこか授乳している時間、どのくらいあります?
みなみえっ…考えたくないくらいです(笑)。授乳して、抱っこで寝かしつけて、泣いたらまた抱っこで…。合計したら何時間だろう。
けんぞう先生ですよね。授乳も抱っこも、腕を前に出して、赤ちゃんをのぞき込む姿勢です。つまり肩が内側に巻いて、背中の上の方が丸くなる時間が、毎日何時間も積み重なる。合間に見るスマホも同じ方向の姿勢です。こうして、反り腰の「上」に、猫背・巻き肩が上書きで重なっていく。
みなみ下の階は反ったまま、上の階は丸くなっていく…。
けんぞう先生うまい例えですね。まさに2階建ての工事が別々に進んでいる状態です。これが「反り腰なのに猫背」の正体。どちらかが間違いなのではなく、時期の違う2つの適応が積み重なった結果なんです。
合体するとどうなる?——筋肉が休めない身体
みなみその合体姿勢って、何が問題なんですか? 痛いとかはないんですけど。
けんぞう先生いい質問です。本来、背骨は首・背中・腰でゆるやかなS字カーブを描いていて、このカーブがあるから、ボウリングの球ほどの重さがある頭を「骨で」支えられます。ところが反り腰と猫背が合体すると、このS字のバランスが崩れる。骨で支えきれない分を、背中や首や腰の筋肉が、24時間態勢で支え続けることになるんです。
みなみ筋肉が常に残業してる状態…。
けんぞう先生そうです。肩こり・首こり・腰の張りが「マッサージしてもすぐ戻る」のは、ほぐしても支える仕事がなくならないから。そして実は、影響は筋肉だけでは終わりません。もうひとつ、目に見えない道があります。
みなみ目に見えない道…?
けんぞう先生自律神経です。日中の活動モード(交感神経)と、夜の回復モード(副交感神経)を切り替えるスイッチの役割をしていて、これが背骨のすぐ近くを通っています。背中が丸まって、まわりの筋肉がガチガチに固まったままだと、このスイッチングがうまくいかなくなる。夜になっても活動モードから降りられず、眠りが浅くなる——つまり合体姿勢は、睡眠の質そのものにも直接影響してくるんです。
みなみ姿勢の話だと思ってたら、眠りの質の話だったんですね…。
けんぞう先生このサイトでずっとお話ししている「姿勢→呼吸→自律神経→睡眠」の連鎖の入口が、まさにこの合体姿勢です。この連鎖の全体像は、こちらの記事で詳しく解説しています。
けんぞう先生そして、この話は夜の寝姿勢まで続きます。合体姿勢の身体は、仰向けに寝ると反った腰と丸い背中がマットレスに収まらず、落ち着かない。だから横向きに逃げて、さらにダンゴムシのように丸まる。すると本来リセットの時間である睡眠中まで丸まったまま——一日の中で、良い姿勢でいる時間がほぼゼロになります。
みなみあ、その話、枕の記事で聞いたやつだ…。全部ここに繋がってたんですね。
けんぞう先生そうなんです。「仰向けで眠れない」「横向きばかり」「朝から身体が重い」の根っこを掘っていくと、かなりの確率でこの合体姿勢に行き着きます。産後の眠りの浅さとの関係は、こちらの記事でも掘り下げています。
じゃあ、どうすればいい?——「共存のまま」で終わらせない
みなみ直したいです…! でも正直、産後の身体で本格的なトレーニングとか、続く気がしません。
けんぞう先生その感覚は正しいです。ただ、ここは大事なところなので正直に言います。合体姿勢は「そういうものなんだ」で受け入れて終わらせず、少しずつ抜け出していってほしいんです。理由はシンプルで、このままだと仰向けで眠れないから。横向きの環境を整えるのはあくまで応急処置。ゴールは、仰向けでも楽に眠れる身体に戻していくことです。家でできる対策を3つ紹介します。
家でできる3つの対策
- 腰を床につけるだけ腹筋(30秒〜60秒キープ):仰向けに寝て、腰と床のすき間をなくすように、お腹の力で腰を床に押しつけたままキープ。妊娠中に伸びきった腹筋を呼び覚まし、反り腰側にアプローチする運動です。お布団の上は柔らかすぎるので、リビングのカーペットの上くらいがちょうどいいですよ
- 筋膜ローラーやストレッチポールで背中を開く:丸まった背中の下に当てて、ゆっくり胸を開くストレッチ。猫背・巻き肩側へのアプローチです。道具がなければ、バスタオルを固めに巻いたロールでも代用できます
- 授乳姿勢を見直す:あぐらをかいて背中を丸めて授乳するのではなく、壁のある場所でお尻を壁にぴったりつけ、もたれた状態で三角座りになり、立てた膝の上に赤ちゃんを抱えて授乳する。「丸まる時間」そのものを減らせる、いちばん効率のいい対策です
みなみ腰を床につけるだけなら、寝る前にテレビを見ながらでもできそう…!
けんぞう先生それでいいんです。あとは1日1回、壁を背にして立つチェックで定点観測を(かかと・お尻・背中・後頭部を壁につけて、腰と壁のすき間が手のひら1枚分に近づいているか)。そして並行して、今夜の眠りは横向きの枕の高さを合わせて守る。環境は「今の身体」用、身体づくりは「未来」用——この二段構えで進めてください。
けんぞう先生骨盤ベルトなどの道具を検討している方は、「ベルトは補助で、姿勢が先」という話をこちらの記事でしています。夜泣き対応で削られている時期の身体との付き合い方も、あわせてどうぞ。
まとめ——「どっちなの?」の答えは「両方」でした
- 反り腰と猫背・巻き肩は矛盾しない。背骨は場所ごとに別のことが起きる
- 反り腰は妊娠中の適応、猫背・巻き肩は産後の授乳・抱っこの適応。時期の違う2つが積み重なって「合体」する
- 妊娠で伸びきった腹筋の代わりに、腰まわりの筋肉が縮んで頑張り続けることで、反り腰から抜け出しにくくなる
- 合体姿勢はS字カーブを崩し、筋肉が休めない身体をつくる。マッサージで戻るのはこのため
- 固まった背中は、背骨の近くを通る自律神経のスイッチング(活動モード⇔回復モード)まで邪魔をして、睡眠の質に直接影響する
- 夜は仰向けがつらくなり、横向き・ダンゴムシ寝へ。睡眠中までリセットできなくなる
- だから「共存のまま」で終わらせない。家でできる対策は3つ:腰を床につけるだけ腹筋(カーペットの上で30〜60秒)/筋膜ローラーやストレッチポールで背中を開く/授乳姿勢の見直し(壁+三角座り+膝の上)
- ゴールは「仰向けでも楽に眠れる身体」。それまでの眠りは、横向きの枕の高さを合わせて守る
みなみ「反り腰なの?猫背なの?」って何年もモヤモヤしてたのが、1本のストーリーで繋がりました。
けんぞう先生自分の身体の歴史が分かると、対策の意味も分かるようになります。それが一番の近道ですよ。
※腰や背中の強い痛み・しびれ・力が入らないなどの症状がある場合は、姿勢のセルフケアより先に医療機関への相談を優先してください。また、産後の身体の回復ペースには個人差があります。無理のない範囲で、少しずつで大丈夫です。
このサイトでは、寝具や表面的な対処だけでなく、身体の土台から不調と睡眠を考えるヒントをお届けしています。「反り腰なのに猫背」——この合体姿勢こそ、当サイトが何度もお話ししてきた「土台」の話の中心です。
執筆・監修:けんぞう先生(整体師/施術歴23年・延べ4万5千人)

