産後、眠りが浅くなったのはなぜ?授乳姿勢と身体の緊張から整体師が解説
産後の「眠りが浅い」には、ちゃんと理由がある
先生、今日は個人的な相談なんですけど……産後、眠りがすごく浅くなった気がするんです。末っ子が泣く前の「ふにゃ」って気配だけで目が覚めちゃって。
先生
それはもう、ママの身体が立派に仕事をしている証拠ですよ。産後のママの身体は、赤ちゃんのサインにすぐ反応できるよう、眠りが浅めになりやすいと言われています。赤ちゃんを守るための、自然な変化の面があるんです。
じゃあ、しかたないってことですか?
先生
半分はそうです。でも、半分は違います。「赤ちゃんに反応しやすい眠り」と、「休めていない眠り」は別もの。前者は自然なことですが、後者には身体側の理由が隠れていることが多い。今日お話ししたいのは、この後者の方です。
前者は自然な変化。後者には、産後ならではの身体の緊張が関わっています。この記事では、後者──身体側の理由をひもといていきます。
休めていない眠り……。たしかに私、赤ちゃんが朝まで寝てくれた日ですら、疲れが残ってるんですよね。
先生
まさにそこです。赤ちゃん側の事情だけでは説明がつかない部分。そこに、産後ならではの「身体の緊張」が関わっているんです。
産後の身体に起きている、3つのこと
その1 授乳・抱っこで、背中が丸まり続けている
先生
みなみさん、1日のうち、授乳と抱っこをしている時間って、合計どれくらいですか?
えっ、考えたこともなかった……。授乳が1回20〜30分で1日6回くらい、抱っこは泣くたびだから……合わせたら4〜5時間はいってるかも。
先生
そうなんです。産後のママは、毎日何時間も「赤ちゃんをのぞき込む姿勢」を続けています。頭が前に出て、背中が丸まり、肩が内側に巻き込まれる。この姿勢が長時間続くと、首の後ろから背中にかけての筋肉が、休みなく頭の重さを支え続けることになります。
頭って、そんなに重いんですか?
先生
ボウリングの球くらい、と言われるとイメージしやすいでしょうか。本来は背骨の自然なカーブで支えられる重さなんですが、のぞき込む姿勢では、そのカーブが崩れて、筋肉が肩代わりする形になる。授乳期の肩こり・首こり・背中の張りの、いちばん大きな背景がこれです。
その2 背中の緊張が、「お休みモード」への切り替えをじゃまする
先生
ここからが眠りとのつながりです。身体には、日中の活動モード(交感神経)と、休息のお休みモード(副交感神経)を切り替える仕組みがあります。この自律神経は、背骨のすぐ近く、背中側を通っているんですね。
あ、それ、なんか聞いたことあります。
先生
背中が丸まった姿勢が続いて、背中の筋肉がカチカチに硬くなると、このモードの切り替えがうまくいきにくくなると考えられています。さらに、丸まった姿勢は肋骨まわりを縮こまらせるので、呼吸も浅くなる。浅い呼吸は、身体にとって「緊張モードの呼吸」です。
つまり……授乳や抱っこで背中がガチガチ→呼吸も浅い→身体がずっと緊張モードのまま、ってことですか。
先生
その通りです。その状態で布団に入っても、身体はお休みモードに切り替わりきれない。眠りが浅い、ちょっとの物音で目が覚める、寝ても疲れが残る──そうした感覚の土台に、この「切り替えられない身体」があることが、とても多いんです。
その3 細切れ睡眠と、添い寝の「同じ向き固定」
先生
もうひとつ、産後ならではの事情があります。夜間の授乳や夜泣きで、睡眠が細切れになることです。
はい、それはもう……。3時間続けて寝られたら「今日は勝った」って思います。
先生
細切れになること自体は、今の時期どうしようもない部分があります。ただ、見落とされがちなのが「寝る姿勢」の方。添い寝や添い乳をしていると、赤ちゃんの方を向いた横向きのまま、何時間も固まっていませんか?
……固まってます。気づいたら朝まで同じ向きだったこと、何度もあります。
先生
本来、寝ている間の寝返りには、同じ場所に負担が集中しないよう身体を動かす役割があります。ところが添い寝中は、赤ちゃんをつぶさないよう無意識にブレーキがかかって、寝返りが極端に減るんです。同じ向きで固まったまま朝を迎えると、筋肉は硬くなり、身体はリセットどころか、むしろこわばりを持ち越してしまう。
寝てる間まで、ママは気を張ってるんですね……。なんか、ちょっと泣きそうになりました。
先生
本当に、そうなんです。だからこそ「眠りが浅いのは自分のせい」なんて、絶対に思わないでほしいんですよ。
あなたはいくつ当てはまる?産後の「休めない身体」チェック
先生
ここで、いくつ当てはまるかチェックしてみましょう。
・授乳・抱っこ・寝かしつけで、1日の大半が「のぞき込む姿勢」
・肩・首・背中のこわばりが、産前より明らかに強い
・添い寝で、同じ向きのまま朝を迎えることが多い
・赤ちゃんが寝てくれた日でも、疲れが取れた感じがしない
・布団に入っても、なかなか気持ちが「オフ」にならない
・気づくと呼吸が浅い、ため息が増えた
3つ以上当てはまる方は、「赤ちゃん都合の細切れ睡眠」に加えて、「身体側の緊張」が眠りの浅さに関わっている可能性があります。
6つ中5つ……ほぼ満点です。
先生
3つ以上当てはまる方は、「赤ちゃん都合の細切れ睡眠」に加えて、「身体側の緊張」が眠りの浅さに関わっている可能性が高いと思ってください。そして身体側の緊張は、細切れ睡眠とちがって、今日から手を打てる部分なんです。
育児の合間にできる、4つの小さな工夫
手を打てるって言われると、俄然やる気が出ます。でも先生、まとまった時間は本当にないですよ。
先生
わかっています。だから全部、1分以内・布団の上か授乳のついでにできるものだけに絞りました。
工夫1 授乳のあとに「胸ひらきリセット」10秒
先生
授乳が終わったら、両手を身体の後ろで組んで(組めなければ腰に当てるだけでOK)、胸をひらいて天井を見上げる。これを10秒。のぞき込む姿勢で縮こまった胸まわりを、そのつどリセットする習慣です。1日6回の授乳なら、1日6回のリセットチャンスがあるということですよ。
授乳とセットなら忘れなさそう。
工夫2 寝る前の「ゆっくり吐く」呼吸を5回
先生
布団に入ったら、鼻から4秒吸って、口から6〜8秒かけて細く長く吐く。これを5回。「吐く」を長くするのがポイントです。緊張モードからお休みモードへ、身体が切り替わりやすい状態をつくってから眠りに入ります。途中で寝落ちしても、それはそれで大成功です。
工夫3 添い寝の向きを、意識的に入れ替える
先生
添い寝の向きが毎晩同じなら、赤ちゃんを寝かせる位置をときどき反対側に変えてみてください。毎晩でなくてもかまいません。「いつも右向きだったな」と気づいたら替える、くらいで十分。同じ側にばかり負担が偏るのを防ぐ工夫です。
たしかに、うち、ベッドの配置的にずっと同じ向きでした。
工夫4 1日1回、1分だけ「大の字」になる
先生
赤ちゃんが寝ている隙に、仰向けで大の字になって、手のひらを天井に向けて1分。何もしなくていいです。丸まり続けた身体を、重力を使って「ひらく方向」に戻してあげる時間です。スマホは見ないのがコツですよ。
それが一番むずかしいやつじゃないですか、先生。
先生
ふふ、よくバレましたね。でも1分だけ、だまされたと思って。
1. 授乳後の「胸ひらきリセット」10秒
2. 寝る前の「ゆっくり吐く」呼吸を5回
3. 添い寝の向きを、ときどき入れ替える
4. 1日1回、1分だけ「大の字」になる
すべて1分以内、布団の上か授乳のついでにできるものです。
がんばりすぎているサインを、見逃さないで
先生
最後に、いちばん大事な話をさせてください。眠りの浅さに加えて、気分の落ち込みが続く、涙が止まらない、何も楽しいと感じられない──そんな状態が続いているなら、それは身体のこわばりだけの問題ではないかもしれません。その場合は、ひとりで抱えず、産婦人科や自治体の産後ケア窓口、かかりつけの先生に早めに相談してください。
眠りの浅さに加えて、以下のような状態が続いている場合は、身体のケアとは別に、早めに専門機関へ相談することをおすすめします。
・気分の落ち込みが2週間以上続く
・涙が止まらない日がある
・何も楽しいと感じられない
・赤ちゃんへの気持ちがわからなくなる
相談先:産婦人科、かかりつけ医、自治体の産後ケア窓口
つらいときに人や専門家を頼ることは、赤ちゃんのためでもあります。
身体のケアと、心のケアは別ってことですね。
先生
はい。そしてどちらも、「がんばりが足りないから」起きるものでは決してありません。この記事で紹介した工夫は、あくまで身体側からの小さなサポート。つらいときに人や専門家を頼ることは、赤ちゃんのためでもある、ということを忘れないでくださいね。
まとめ──浅い眠りは、ママの身体からのメッセージ
先生
今日のポイントです。
産後の眠りが浅くなるのは、赤ちゃんに反応するための自然な変化の面がある。ただし「休めていない」感覚の土台には、授乳・抱っこ姿勢による背中の緊張と浅い呼吸、添い寝による寝返り不足という「身体側の理由」が隠れていることが多い。
対策は、授乳後の胸ひらき10秒・寝る前のゆっくり吐く呼吸・添い寝の向き替え・1日1分の大の字。そして、気分の落ち込みが続くときは、身体のケアとは別に、早めに専門機関へ相談を。
「眠りが浅いのは自分のせいじゃない」って言ってもらえただけで、今日はぐっすり眠れそうな気がします。
先生
その気持ちが、いちばんの入眠準備かもしれませんね。焦らず、できるところから始めていきましょう。
よくある質問
Q. 産後、眠りが浅くなったのはなぜですか?
産後のママの身体は、赤ちゃんのサインにすぐ反応できるよう眠りが浅めになりやすいと言われています。これは自然な変化ですが、それに加えて授乳・抱っこ姿勢による背中の緊張、浅い呼吸、添い寝による寝返り不足といった「身体側の理由」が重なると、休めていない状態が続きやすくなります。
Q. 授乳や抱っこの姿勢が、眠りの浅さに関係しているのですか?
関係していることが多いです。のぞき込む姿勢が長時間続くと、背中の筋肉がこわばり、自律神経のモード切り替えがうまくいきにくくなると考えられています。肋骨まわりも縮こまって呼吸が浅くなるため、布団に入っても身体がお休みモードに入りきれないことがあります。
Q. 育児中でもできる、眠りを助ける工夫はありますか?
すべて1分以内でできるものとして、授乳後に胸をひらいて10秒リセットする、寝る前にゆっくり長く吐く呼吸を5回行う、添い寝の向きをときどき入れ替える、1日1回大の字で1分横になる、の4つがあります。気分の落ち込みが続く場合は、身体のケアとは別に産婦人科や自治体の産後ケア窓口への相談をおすすめします。
産後に限らず「寝ても疲れが取れない」と感じている方へ。姿勢と自律神経のつながりを、さらに詳しく解説しています。