姿勢・骨格

[#12]産後の骨盤の歪み、いつまで続く?整体師が教える身体の変化と向き合い方

文=けんぞう(美容整体師・小顔矯正士/施術歴23年・延べ4万5千人)

産後、体型がなかなか元に戻らない。腰まわりが何となく不安定な気がする。そんな「産後の骨盤」の変化、いつまで続くのか気になりますよね。こんにちは、整体師のけんぞうです。施術歴23年・延べ4万5千人の身体と向き合ってきました。この記事では、産後の骨盤に実際に起きていることと、時期に応じた向き合い方をお伝えします。
みなみ
みなみ先生、下の子を産んでもう10か月経つのに、まだ骨盤まわりがグラグラしてる感じがするんです。産後は骨盤が歪むってよく聞きますけど、これっていつまで続くものなんですか?
けんぞう先生
けんぞう先生それ、産後のママさんからいちばんよく聞かれる質問のひとつです。結論からお伝えすると、「歪み」という表現はちょっと誤解を生みやすくて、実際に産後の身体で起きているのは「歪み」よりも「ゆるみ」に近いんです。今日はその仕組みと、時期ごとにどう付き合っていけばいいかを整理していきますね。

産後に起きているのは「歪み」より「ゆるみ」

みなみ
みなみ歪みじゃなくて、ゆるみ、ですか?
けんぞう先生
けんぞう先生はい。妊娠中、身体はお産に向けて「リラキシン」というホルモンを出して、骨盤まわりの靭帯や関節を、普段よりゆるく・動きやすくしていきます。赤ちゃんが産道を通れるようにするための、身体の大切な準備なんですね。
みなみ
みなみ赤ちゃんを産むための仕組みなんですね。
けんぞう先生
けんぞう先生そうなんです。ところがこのホルモンの影響で、骨盤まわりの関節や靭帯は出産後もしばらくゆるんだ状態が続きます。ゆるんだ土台の上に、慣れない抱っこや授乳の姿勢、寝不足での動き方が重なると、骨盤が本来の位置からずれたまま安定してしまうことがある。これが「産後の骨盤が歪む」と言われる状態の正体です。
みなみ
みなみゆるんでいるところに、日々の生活のクセが積み重なっていく、ということですね。
けんぞう先生
けんぞう先生その通りです。だから「歪んだ」というより「ゆるんでいる間に、ずれた位置のまま固まりかけている」とイメージしてもらう方が近いんですよ。

いつまで続く?目安となる時期の考え方

みなみ
みなみそれで、結局いつまで続くんでしょうか……。
けんぞう先生
けんぞう先生ここは個人差が大きいところなのですが、目安としてお伝えできる考え方はあります。リラキシンの影響自体は、産後半年から1年ほどかけて少しずつ落ち着いていくと言われています。ただし「ホルモンの影響が落ち着く」ことと、「骨盤の状態が元に戻る」ことは、実はイコールではないんです。
みなみ
みなみえ、別のことなんですか?
けんぞう先生
けんぞう先生はい。ホルモンの影響が落ち着いても、その間に「ずれた位置」で身体が固まってしまっていたら、自然には戻らないケースが多いんです。逆に言えば、ゆるんでいる産後半年〜1年の期間は、身体がまだ変化しやすい時期でもある。だからこそ、この時期にどう身体を使うかが、その後の身体の状態を大きく左右すると考えています。
みなみ
みなみ10か月の今も、まだ間に合う時期ということですね。
けんぞう先生
けんぞう先生十分に間に合う時期です。焦る必要はありませんが、「そのうち自然に戻るだろう」と何もせずに過ごすより、今からできることを積み重ねる方が、この先の身体にとってはプラスになりやすいですよ。逆に言うと、「早く骨盤を閉めなきゃ」と焦る必要もないということです。焦って早く閉めようとしたとしても、先ほどお話ししたように、リラキシンの影響自体は産後半年から1年ほどかけて少しずつ落ち着いていくものなので、ゆるい状態のまま骨盤矯正をしても、またすぐに緩んでしまいやすいんです。それよりも、普段の姿勢に気をつけることや、痛みの少ないポジションを探すことを優先してほしいんですね。育児や家事をこなすだけでも大変な時期ですから、まずは少しでも楽な体勢を見つけてもらう方が大切です。「産後は1日でも早く骨盤を閉めないと、体型が崩れたり体重が戻らなくなったりしますよ」といった煽りに惑わされることなく、まずはゆっくりと身体を休めてくださいね。

産後の骨盤まわりで意識したい3つのこと

けんぞう先生
けんぞう先生特別なトレーニングより先に、日々の中で意識できることが3つあります。

①抱っこ・授乳の姿勢の左右差

けんぞう先生
けんぞう先生赤ちゃんを抱っこするとき、いつも決まった側の腕・腰で支えていませんか?
みなみ
みなみあ、下の子は左腕で抱っこすることが多いです。上の子の授乳のときもそうでした。
けんぞう先生
けんぞう先生その左右差が、ゆるんだ骨盤まわりに偏った負担をかけ続けることになります。完全に均等にするのは難しくても、「気づいたときだけ反対側に抱え直す」くらいの意識で十分です。授乳のときも、クッションなどで身体を支えて、片側だけに体重が乗り続けないようにするのがおすすめです。

②立ち方や授乳の時の座り方について

けんぞう先生
けんぞう先生片脚に体重を乗せて立つ癖、椅子に浅く座って骨盤が後ろに倒れた姿勢、この2つも産後の骨盤まわりには負担になりやすいです。以前、座り姿勢と肩こりの話で「骨盤が立つと頭の位置も整いやすくなる」とお伝えしましたが、これは産後の骨盤にとっても同じことが言えます。

また、授乳のときにあぐらをかいてクッションを置き、その上で猫背ぎみになって授乳している方も多いのではないでしょうか。これだとどんどん姿勢が崩れて、肩・首・背中から腰までの負担がとても大きい状態になってしまいます。片側10分、15分、20分とかかることも多いですから、その間ずっと身体に負担がかかり続け、ゆるんだ骨盤まわりにも偏った負担がかかり続けることになるんです。
けんぞう先生
けんぞう先生私がおすすめしたいのは、壁にお尻と背中をつけてもたれる姿勢です。そして膝を立てて、その膝の上で赤ちゃんを抱きかかえて授乳してみてください。赤ちゃんも安定しますし、身体の疲れもだいぶ軽くなるのが分かるはずです。これは夜中の授乳のときも同じで、眠いので横になったままあげているお母さんの気持ちもよく分かるのですが、結果的に身体への負担がかかりすぎて、かえって疲れが取れなくなってしまうことが多いんです。暗い中でも壁にもたれられる環境を作って、そこで膝を立てて授乳してあげると、お母さんがウトウトしていても赤ちゃんは安定した体勢のまま飲んでくれて、そのまま眠ってくれることも多いですよ。
みなみ
みなみまさに毎回あぐらで猫背になってました…!壁にもたれて膝を立てる、今日の夜からやってみます。

③無理のない範囲で身体を動かす

けんぞう先生
けんぞう先生産後は睡眠不足も重なって、身体を動かす余裕がなくなりがちです。ただ、まったく動かない時間が続くと、ゆるんだ状態のまま筋肉も硬くなっていきます。激しい運動である必要はなく、赤ちゃんを抱っこしたまま軽く歩く、床に座って脚を伸ばすなど、日常の延長でできる範囲で十分です。
みなみ
みなみ特別なことじゃなくていいんですね、それなら続けられそうです。
けんぞう先生
けんぞう先生無理のない範囲というのがポイントです。体調がすぐれない時期に頑張りすぎる必要はまったくありません。

こんな場合は、まず医療機関へ

けんぞう先生
けんぞう先生ここは必ずお伝えしておきたいのですが、恥骨や股関節に強い痛みがある、歩行に支障が出る、産後の出血や体調に気になる変化があるといった場合は、骨盤の状態うんぬんの前に、まず産婦人科や整形外科に相談してください。今日お話ししたのは、あくまで日常生活の中でできる工夫の範囲のお話です。
みなみ
みなみ分かりました。今のところそこまでではないので、まずは抱っこの左右差から気をつけてみます。

身体の土台が整った上で、次に見るもの

けんぞう先生
けんぞう先生骨盤まわりが少しずつ整ってくると、その上に乗っている背骨や姿勢全体も安定しやすくなります。実はこれ、肩こりや自律神経の話ともつながっていて、以前お伝えした「姿勢が崩れると呼吸が浅くなり、自律神経の切り替えもうまくいきにくくなる」という連鎖の、いちばん土台にあるのが骨盤なんです。
みなみ
みなみ骨盤って、肩こりにもつながっているんですね。まさか下から全部つながっているとは思いませんでした。
けんぞう先生
けんぞう先生身体はひとつながりですからね。骨盤・背骨・首、そして呼吸や自律神経まで、順番に積み上がっている。だからこそ、土台である骨盤まわりを大切にしてあげることが、結果的にいろいろな不調のケアにつながっていくんです。

まとめ

けんぞう先生
けんぞう先生今日のポイントをまとめますね。
みなみ
みなみ「もう手遅れかな」と思ってましたけど、今からでも十分間に合うと分かって安心しました。まずは抱っこの腕、意識して変えてみます。
けんぞう先生
けんぞう先生その意識だけでも、積み重ねれば十分な変化になりますよ。焦らず、できることから少しずつ整えていきましょう。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。強い痛みや体調の異変がある場合は、医療機関にご相談ください。

執筆・監修:けんぞう先生(整体師/施術歴23年・延べ4万5千人)