#44 着圧ソックスで逆にむくむ?|履かない方がいい人と、見直したい4つのポイント
良かれと思って履いている着圧ソックスで、逆にむくむ気がする。その違和感には理由があります。こんにちは、整体師のけんぞうです。施術歴23年・延べ4万5千人の身体と向き合ってきました。この記事では、医療機関に相談すべきサインの見分け方と、タイミング・時間・圧・そもそも論の4つの見直しポイントをお伝えします。
- 「逆にむくむ」は気のせいではないことが多いです。タイミング・時間・圧の3つの使い方で、流れを止めてしまっている可能性があります
- ただしその前に、片脚だけ・痛み・熱っぽさ・押しても戻らないむくみは、セルフケアではなく医療機関へ
- 着圧ソックスは「むくみを取る道具」ではなく「絞り出す道具」。主役は、流れる身体をつくることです
「良かれと思って履いてるのに、逆にむくむ気がする」
先生、聞いてもらえますか。私、夜のむくみ対策に着圧ソックスを履き始めたんですけど……なんだか前より脚が重い気がするんです。
脱いだあと、どんな感じですか。
跡がくっきり残ってて、ちょっとかゆいときもあります。あと、朝起きたときに、ふくらはぎがパンパンというか。
なるほど。みなみさん、それはたぶん、気のせいではないです。
やっぱり!? でも、着圧ソックスって、むくみにいいものですよね?
「使い方次第」というのが正確なところです。着圧ソックスは、正しく使えば日中に溜まった余分な水分を絞り出してくれる、良い道具です。でも、使い方を間違えると、体の流れそのものを止めてしまう。同じ道具が、真逆の働きをするんです。
私、間違った使い方をしてるってことですか。
それを今日、一緒に確認していきましょう。ただ、その前に。どうしても先にお伝えしなければいけないことがあります。
先に確認してください:それ、医療機関の領域かもしれません
順番が前後するようですが、今日いちばん大事な話を先にします。
「逆にむくむ」と感じている方の中には、着圧ソックスの使い方の問題ではなく、身体の中で別のことが起きている方が混ざっています。以下に当てはまる場合は、この記事を読み進める前に、まず医療機関を受診してください。
- 片脚だけが急にむくんできた
- むくんでいる部分に痛みや熱っぽさがある
- すねを指で押すと、へこんだまま戻ってこない
- 朝になっても引かないむくみが何日も続いている
- 息切れ・動悸・急な体重の増加を伴う
えっ、むくみって病気のこともあるんですか。
あります。心臓・腎臓・肝臓や、血管の病気が、むくみという形で顔を出すことがあるんです。特に片脚だけというのは大事なサインです。疲れや水分のむくみは、基本的に両脚に出ますから。
そういうときに着圧ソックスで対処しようとしたら……。
対処になりませんし、場合によっては良くない方向に働きます。だからこの話を最初にしました。当てはまる方は、セルフケアで様子を見ないでください。
なお、病院で処方される医療用の弾性ストッキングは、市販の着圧ソックスとは別物です。医師の指示で使っている方は、この記事の内容より主治医の指示を必ず優先してください。
ここから先は、検査で異常がないのに、夕方の脚のパンパンに悩んでいる方へのお話です。
見直し①タイミング:お風呂の「前」ですか、「後」ですか
では確認していきましょう。みなみさん、着圧ソックスはいつ履いていますか。
お風呂上がりです。そのまま朝まで。
出ました。「逆にむくむ」の原因として、いちばん多いパターンです。
えっ、お風呂上がりってダメなんですか。清潔な脚に履きたいじゃないですか。
気持ちは分かります。でも、体の側から見ると順番が逆なんです。お風呂上がりは、温まって血行が良くなっている状態ですよね。せっかく全身の流れが良くなっているところに、外から圧をかけて締める。アクセルとブレーキを一緒に踏んでいるようなものなんです。
じゃあ、いつ履けば。
帰宅してから、お風呂に入るまでです。日中に溜まった余分な水分を、入浴までのあいだに絞り出しておく。そしてお風呂で温まって流れが良くなったら、あとは締めずに、流れるままにして眠る。「お風呂」を境に、おすすめとおすすめしないが反転する、と覚えてください。
締めるのは、お風呂の前まで。
そうです。この「履いたまま寝るとどうなるか」は、それだけで1本の記事にしてあります。寝ている間に体の中で何が起きているか、詳しく知りたい方はそちらをどうぞ。
見直し②時間:つけっぱなしは「流れを止め続けている」
次は時間です。日中に履く場合でも、「何時間でもOK」ではありません。
長く履くほど絞れる、わけじゃないんですか。
そこが誤解されやすいところです。むくみの正体を思い出してください。体に残った余分な水分や老廃物ですね。これは本来、静脈とリンパの流れが回収して、心臓に戻り、腎臓から外に出ていきます。体には、もともと排出の流れが備わっているんです。
着圧ソックスは、それを手伝ってる。
手伝うというより、「今溜まっている分を絞り出す」のが役割です。ここで大事なのは、圧をかけているあいだ、新しく流れてくるものは入りにくくなっているということ。短時間なら「絞り出し」の利点が勝ちます。でも長時間つけっぱなしにすると、今度は「流れを堰(せ)き止めている」時間のほうが長くなってしまう。
ダムみたいになっちゃう。
そういうイメージです。目安としては、帰宅後からお風呂までの1〜2時間もあれば、絞り出しの仕事は十分です。一日中つけっぱなし、ましてや24時間着けている必要はありません。脱いだときに解放感があって、脚が軽い。それが上手に使えているサインです。
脱いだあとに違和感があるのは……。
締めすぎか、長すぎか、タイミングが違うか。どれかのサインだと思ってください。
見直し③圧とサイズ:「強いほど良い」は誤解です
3つめは、圧の強さとサイズです。みなみさんのソックス、どうやって選びました?
正直、「いちばん締まりそうなやつ」を選びました。強いほうが働きそうで。
多いんですよ、その選び方。でも、圧は強ければ良いものではありません。体の回収の流れは、ものすごく繊細な圧で動いています。強すぎる圧は、絞り出すどころか、流れの道そのものを押しつぶしてしまうことがあるんです。
締めてるのに、流れてない状態。
そうです。それから、サイズが合っていない場合。小さすぎれば締めすぎになりますし、ゴムの部分だけが食い込むと、そこだけ堰(せ)き止められて、境目の上だけむくむということも起きます。脱いだあとのかゆみや、くっきり残る跡は、圧やサイズが合っていないサインのことが多いですよ。
かゆいの、それだったんだ……。
ちなみに、かゆみには素材が肌に合っていない場合もあります。跡が長く残る、かゆみを繰り返す、湿疹のようになってきた、という場合は、無理に続けず、皮膚科に相談してください。
圧の数字(hPa)の見方や、丈・素材の選び方は、選び方の記事に詳しくまとめています。買い替えを考えるなら、そちらを見てから選ぶと失敗しにくいです。
見直し④そもそも論:「締める」前に、「流れる身体」ですか
最後の見直しポイントは、道具の話ではありません。そもそも、脚がむくむ理由の話です。
立ち仕事だから、とか?
みなみさんは在宅のお仕事でしたよね。座りっぱなしの時間、長くないですか。
長いです。気づいたら3時間動いてないこともあります。
そこなんです。脚の水分を心臓に押し戻すポンプの主役は、ふくらはぎの筋肉です。歩いたり、足首を動かしたりするたびに、筋肉が縮んで血管を絞って、水分を上へ押し上げてくれる。座りっぱなしということは、このポンプが止まっているということなんです。
ポンプが止まってるから、溜まる。
そうです。ここで考えてほしいんです。ポンプが止まって溜まった水分を、夕方に着圧ソックスで絞り出す。これは対処としては悪くない。でも、ポンプを動かせば、そもそも溜まりにくいわけですよね。
締める前に、動かす。
それが本来の順番です。仕事の合間に立ち上がる、座ったまま足首を回す、かかとを上げ下げする。それから、水分の摂り方も流れに直結します。このあたりは、それぞれ記事にまとめてあるので、「締める」と並行して「流す」側も整えてみてください。着圧ソックスは、流れる身体という土台の上で使ってこそ、良い道具になります。
それでも合わないなら、「履かない」も選択肢です
先生、正直に聞きますけど……着圧ソックスって、履かない方がいい人もいるんですか。
います。正直にお答えしますね。
まず、冒頭でお話しした医療機関の領域のサインがある方。これは論外で、まず受診です。それから、肌トラブルを繰り返す方。かゆみや湿疹が続くのに我慢して履き続ける必要は、まったくありません。
そして、もうひとつ。「履かないと不安」になってしまっている方です。
あ……ちょっと分かるかもしれません。
着圧ソックスは、うまく使えばスッキリ感のある良い道具です。でも、それはあくまで「今日溜まった分の対処」であって、むくみにくい身体を作ってくれるわけではないんです。道具に頼る比重が増えるほど、身体側の「流す力」を使う機会は減っていきます。
頼りすぎもよくない。
はい。だから私は、こう考えてもらうのがいいと思っています。主役は、動かすこと・水分・身体の状態。着圧ソックスは、忙しくてポンプを動かせなかった日の助っ人。助っ人が毎日フル出場しているなら、主役の出番を増やすタイミングです。
助っ人、うちのチームでは完全にエースでした。
多いんですよ、そのチーム編成。今日から少しずつ、主役に戻ってもらいましょう。
よくあるご質問
Q. 着圧ソックスは1日何時間まで大丈夫ですか?
一律の上限を言うことはできませんが、目安として「帰宅後からお風呂まで」の1〜2時間で、絞り出しの役割は十分に果たせます。長く履くほど良いものではなく、脱いだときに脚が軽いと感じられる範囲で使ってください。
Q. 夜用として売られている着圧ソックスなら、寝るときに履いてもいいですか?
夜用の商品は、日中用より圧が弱く設計されているのが一般的です。商品そのものを否定はしません。ただ、私の考え方としては、睡眠中は圧をかけずに、体本来の排出の流れに任せる時間にしてあげてほしい、というのが基本です。使うかどうかは、朝の脚の軽さで判断してみてください。
Q. 飛行機や夜行バスの長時間移動では履いたほうがいいですか?
長時間同じ姿勢で座り続ける状況は、日常とは条件が違います。移動中の着用は理にかなっている場面ですが、持病のある方や長距離フライトの場合は、事前に医師に相談するのが安心です。合わせて、時々足首を動かすことも忘れずに。
Q. 産後のむくみにも同じ考え方でいいですか?
産後は体の水分バランスが大きく変わる時期で、むくみが出やすいのは自然なことです。基本の考え方(お風呂の前まで・締めすぎない)は同じですが、むくみが強く続く場合や血圧の変化を伴う場合は、産後健診で相談してください。
Q. 脱いだあとに跡がくっきり残ります。やめたほうがいいですか?
短時間で消える程度の跡は、ある程度は仕方ありません。ただ、長時間残る・かゆみを伴う・境目の上だけむくむ場合は、サイズか圧が合っていないサインです。一度、選び方から見直してみてください。
おわりに
今日の話を一行にまとめます。
「逆にむくむ」は、道具のせいではなく、使い方が体の流れと逆走しているサインです。
タイミングはお風呂の前まで。時間は絞り出しに必要なぶんだけ。圧は強すぎず、サイズは合ったものを。そして何より、締める前に、動かして流す。この順番に戻すだけで、着圧ソックスは「逆にむくむ道具」から「助っ人」に戻ってくれます。
なお、繰り返しになりますが、片脚だけの急なむくみ、痛みや熱っぽさ、押しても戻らないむくみ、何日も続くむくみは、まず医療機関を受診してください。セルフケアの工夫では対応できないものがあります。
そして、検査を受けて「異常はありません」と言われたのに、夕方の脚のパンパンが続いている方。そこからが、このサイトの領域です。あきらめる必要はありません。
その不調、寝具のせいだけじゃないかもしれません。身体の状態を整えた上で、自分に合った環境を選ぶことが大切です。
※この記事の内容は一般的な情報提供であり、診断や治療の代わりにはなりません。

