#7 着圧ソックスを履いたまま寝るのはアリ?整体師が話す「圧で止めるより、流す」という考え方
導入
けんぞう先生、私、夜のむくみ対策はばっちりなんですよ。お風呂上がりに着圧ソックスを履いて、そのまま寝るんです。朝脱ぐと脚がスッキリしてて、「効いてるー!」って。
先生
おお、なるほど。ちなみにそれ、いつ頃から続けてますか?
3人目を産んでからなので…もう1年くらいですね。でも不思議なんですけど、1年続けてるのに、夕方になるとやっぱり脚がパンパンなんです。スッキリするのは朝だけで。
先生
そこなんです。今日はその「朝はスッキリするのに、むくみ自体はずっと続いている」の仕組みの話をしますね。ポイントは、寝ている間、締められた脚の中で何が起きているかです。
むくみの正体と、体が持っている「回収の仕組み」
先生
まず、むくみの正体から。むくみのほとんどは、体に残った余分な水分や老廃物です。
それが脚に溜まるから、パンパンになるんですね。
先生
そうです。ただ、ここで知ってほしいのは、体にはもともとそれを回収する仕組みがちゃんと備わっているということ。余分な水分の大部分は静脈が回収します。そして静脈が回収しきれなかった分を、リンパ液がリンパ管を通じて回収する。
静脈が主役で、リンパが残りを拾ってくれる…。
先生
いい整理です。回収されたものは一旦心臓に戻って、その後腎臓へ流れて、最終的には尿や汗、便として排泄されます。これが体本来の「排出の流れ」。この流れがスムーズに回っていれば、むくみは溜まりにくいんです。
じゃあ私の脚がパンパンなのは、その流れが滞ってるってことですか。
先生
その可能性が高いですね。座りっぱなしのデスクワークで、股関節・膝・足首の3つの関節が曲がった状態(血管やリンパ管も一緒に曲げられている状態)で、しかもふくらはぎの筋肉があまり動かない日が続くと、脚から心臓へ戻る流れが弱くなります。みなみさんの場合は在宅ワークに加えて、抱っこで同じ姿勢が続くことも多いでしょうから。
着圧ソックスの「スッキリ」の正体
でも先生、だからこそ着圧ソックスなんじゃないですか? 締めてれば溜まらないわけだし。
先生
そう思いますよね。実際、着圧ソックスで足をぎゅっと締めると、溜まっていた余分な水分を絞り出すことができます。だから脱いだときのスッキリ感は本物です。あれは気のせいじゃない。
ですよね! じゃあ何が問題なんですか?
先生
問題は、絞り出すのと同時に、新しく流れてきているものまでシャットアウトしてしまうことです。
…どういうことですか?
先生
さっき話したとおり、脚の中では常に「水分が届く→静脈とリンパが回収する→心臓へ戻す」という流れが回っています。着圧で外から締め続けるということは、この行き来の通り道を細くし続けるということ。溜まったものは絞り出せても、全体で見ると流れそのものが滞留してしまうんです。
出ていく分だけじゃなくて、入ってくる流れも止めちゃってるんだ…。
先生
そうなんです。だから「朝はスッキリ、でも夕方はまたパンパン」を1年繰り返すことになる。締めている間だけ形が変わっているだけで、流れの根っこは変わっていないからです。
着圧ソックスの「スッキリ」は、溜まった水分を絞り出した結果で本物。ただし同時に、新しく流れてくるものまで止めてしまうため、体全体で見ると流れが滞留する。むくみの根っこである「流れの弱さ」はそのまま残る。
お風呂上がりに履いて寝るのは「アクセルとブレーキを一緒に踏む」ようなもの
先生
その中でも、私が一番もったいないと思っているのが、みなみさんのやり方——お風呂上がりに履いて、そのまま寝るです。
えっ、一番いいタイミングだと思ってました。温まって血行が良くなってるうちに締めておこう、って。
先生
お風呂上がりは、まさに血行が良くなって、体中の流れが勢いよく回っている時間です。体が自分から「今、流してますよ」と頑張ってくれている。そこに着圧で締めるのは、アクセルとブレーキを一緒に踏んでいるようなものなんです。
うわ…。せっかくお風呂で温めた意味が…。
先生
しかもそのまま寝てしまうと、ブレーキを踏んだ状態が朝まで6〜7時間続きます。睡眠って本来、日中に溜まった疲労を回収して体をリセットする時間です。その間ずっと脚の流れを止めておくのは、リセットの邪魔をしていることになる。朝脱いだときにスッキリしているのは当然です。でも、流れを止められていたものが、寝ている間どうなっていたか——ここを考えたことはありますか?
…なかったです。「朝スッキリ=良いこと」としか。
先生
責めているわけじゃないですよ。「締めればスッキリする」という体感は事実だから、続けたくなるのは自然です。ただ、全体で見たら、流れを止めるのではなく、流してあげることで体の中を整えていくのが本来の体の機能なんです。私の立場は一貫してこれです。圧で止めるより、流す。
じゃあどうする?「流す」ためにできること
じゃあ着圧ソックスをやめたとして、代わりに何をすれば…。
先生
「流す」方向のケアに切り替えましょう。特別なことじゃなくていいんです。
先生
まず日中は、1時間に1回、足首を動かすこと。座ったままでいいので、かかとを上げ下げしたり、足首をぐるぐる回したり。ふくらはぎの筋肉は「第二の心臓」と呼ばれていて、脚の水分を心臓へ押し戻すポンプの役割をしています。ポンプは動かしてこそ働きます。
それなら授乳中でもできそう。
先生
次に、お風呂上がり。締める代わりに、足首からひざへ向かって、手のひらでやさしくなで上げてください。強く揉む必要はまったくありません。流れの向き——脚から心臓へ——を手伝ってあげるイメージで、片脚1分ずつで十分です。
締めるんじゃなくて、流れの向きに手伝う…。
先生
そして寝るときは、足元にたたんだタオルケットなどを入れて、脚を少しだけ高くして寝てみてください。ほんの数センチでいい。重力が「脚から心臓へ」の流れの味方になってくれます。それから、以前お話しした寝る前の深呼吸(→けんぞう式深呼吸の記事)。あれもむくみと無関係じゃないんですよ。深い呼吸は体をお休みモードに切り替わりやすくして、体が本来のリセット作業をしやすい状態をつくってくれますから。
仰向けの記事の「ストンと吐く」やつですね。続けてます!
先生
素晴らしい。締める習慣を、流す習慣に置き換える。道具を買い足す必要は何もありません。
大事な注意:医療用の弾性ストッキングは「別物」です
先生
最後に、これはとても大事な区別の話です。今日お話ししたのは、市販の着圧ソックスを自己判断で使う場合のこと。病院で処方・指導される医療用の弾性ストッキングは、まったくの別物です。
えっ、あれも締めるものですよね?
先生
締めるという点は同じでも、あちらは下肢静脈瘤などの治療のために、医師が状態を診て、圧の強さや使い方を決めて使うものです。医師の指示で使っている方は、自己判断でやめたりせず、必ず主治医の指示を優先してください。
医療の領域は医療の判断で、ってことですね。
先生
そのとおり。それからもうひとつ。片脚だけ急にむくむ、痛みや熱っぽさを伴う、朝になっても引かないむくみが続く——こういう場合は、心臓・腎臓・肝臓や血管の病気が隠れていることがあります。セルフケアで様子を見ずに、まず医療機関で診てもらってください。今日の話は、検査で異常がないのに夕方の脚のパンパンに悩んでいる方に向けたものです。産後のむくみが気になる方は、産後の体と睡眠の話もあわせてどうぞ。
まとめ:締める習慣を、流す習慣へ
先生
今日の話をまとめますね。
- むくみの正体は余分な水分や老廃物。体には静脈とリンパによる回収→心臓→腎臓→排泄という本来の流れが備わっている
- 着圧ソックスのスッキリ感は本物。ただし新しく流れてくるものまで止めてしまうため、全体の流れは滞留し、むくみの根っこは残る
- お風呂上がりに履いてそのまま寝るのは、アクセルとブレーキを一緒に踏んでいるようなもの
- 代わりにできるのは「流す」ケア:1時間に1回の足首の上げ下げ/お風呂上がりのなで上げ/足元を少し高くして寝る/寝る前の深呼吸
- 医療用の弾性ストッキングは別物。医師の指示があるものは主治医優先。片脚だけの急なむくみ・痛みを伴うむくみは医療機関へ
1年間の「朝スッキリ」の正体がわかって、ちょっと衝撃でした…。今夜からソックスはお休みして、なで上げと足元タオルでやってみます。
先生
はい。1週間ほど続けて、夕方の脚の感じを観察してみてください。体は流れを止められるより、流れを手伝ってもらえる方がずっと得意ですから。