睡眠・自律神経
[#50]夏の後半にどっと疲れが出るのはなぜ?残暑の身体で起きていること
文=けんぞう(美容整体師・小顔矯正士/施術歴23年・延べ4万5千人)
「夏が始まった頃より、今のほうが身体が重い」「暑さには慣れてきたはずなのに、朝起きるのがつらい」。8月の後半になると、こうした声が一気に増えます。気のせいでも、気合いの問題でもありません。今日は、夏の後半に身体が消耗する仕組みと、これから始まる季節の変わり目への備えを、一緒に見ていきましょう。
みなみけんぞう先生、まだまだ暑いですよね。もう暑さには慣れたはずなのに、なぜか身体がだるくて。7月のほうがまだ元気だった気がするんです。
けんぞう先生その感覚、正しいですよ。実はこの時期、施術に来られる方から同じ話をよく聞きます。「夏の前半より、後半のほうがしんどい」って。
みなみそうなんですね。ちょっと安心しました。私だけかと思ってて。
けんぞう先生みなみさんだけではありません。しかも、これにはちゃんと理由があるんです。今日はその仕組みからお話ししますね。
身体は「一定の体温を保つ」ために働き続けている
けんぞう先生まず前提として、私たちの身体は、外の気温がどうであれ、体温をほぼ一定に保とうとします。暑ければ汗をかいて熱を逃がし、寒ければ血管を縮めて熱を逃さないようにする。この調整は、意識しなくても自動で行われています。
みなみ自分では何もしてないつもりでも、身体は動いてるんですね。
けんぞう先生そうなんです。そして大事なのは、この調整にはエネルギーを使っているということ。何もしていないように見えて、身体の内側では作業が続いているわけです。
みなみじゃあ、気温の差が大きいほど、その作業も増えるってことですか。
けんぞう先生その通りです。ここが夏の後半にだるくなる仕組みの核心です。
今いちばん多いのは「室内と外」の温度差
けんぞう先生残暑の時期に身体が消耗する最大の要因は、実は外の暑さそのものではありません。冷房の効いた室内と、猛暑の屋外。この2つを行き来するたびに起きる調整です。
みなみ確かに、外に出た瞬間の「うわっ」って感じ、毎回きついです。
けんぞう先生その「うわっ」の瞬間、身体の内側では急激な切り替えが起きています。室内では熱を逃がさないモードだったのが、一瞬で熱を逃がすモードへ。買い物に出て、店内に入って、また外へ。半日出かけただけでも、何度も切り替えが発生します。
みなみ服なら脱いだり着たりで済むけど、身体はそうはいかないですもんね。
けんぞう先生そうなんです。しかもこの切り替えは、10度以上の差で起きることも珍しくありません。室内28度、外は37度。これだけの差を、身体は一瞬で処理しようとします。この繰り返しが、じわじわと消耗につながっていきます。
みなみ意識してないところで、そんなに働いてたんですね。
けんぞう先生そして8月後半になると、ここに新しい要素が加わってきます。朝晩の気温が、少しずつ下がり始めるんです。
みなみ言われてみると、明け方はちょっとマシになってきた気がします。
けんぞう先生そうですよね。日中はまだ猛暑なのに、明け方だけ気温が下がる。つまり、一日の中の気温差が広がり始めている時期でもあります。夏の疲れが溜まりきったところに、寒暖差という新しい負担が乗り始める。8月後半がしんどい理由は、ここにもあります。
みなみ私、ずっと在宅で家にいるから、外気に慣れてないかもしれません。
けんぞう先生それはあると思います。空調の効いた環境に長くいると、身体が温度差に対応する機会が減ります。すると、いざ差にさらされたときの負担が大きくなりやすい。在宅ワークの方がこの時期にだるさを感じやすいのは、そういう背景もあります。
切り替えを担当しているのが、自律神経
みなみその切り替えって、身体のどこがやってるんですか。
けんぞう先生自律神経です。以前お話しした、活動モードの交感神経と、お休みモードの副交感神経。この2つの切り替えが、体温調節にも関わっています。
けんぞう先生そうです。そして、ここが重要なところなんですが、自律神経の切り替えは、無限にスムーズにできるわけではありません。何度も切り替えを求められ続けると、そのやり取り自体が追いつかなくなってきます。
みなみ電気のスイッチをずっとパチパチしてるみたいな感じですか。
けんぞう先生イメージとしては近いですね。そして切り替えが追いつかなくなると、本来お休みモードに入るべき夜になっても、うまく切り替わらない。だから、寝ても疲れが抜けにくい状態になりやすいんです。
けんぞう先生一因としては大きいと思います。しかも厄介なのは、この状態が積み重なりやすいことです。夜に切り替わりきれない、だから疲れが抜けない、疲れが抜けないから翌日の調整がさらにきつくなる。この循環に入ると、なかなか自力では抜け出しにくくなります。
けんぞう先生そうです。そして断ち切りやすいポイントが、後半でお話しする睡眠環境と、身体の側の状態です。
姿勢の崩れが重なると、さらに切り替えにくくなる
けんぞう先生ここに、もう一つの要素が加わります。自律神経は背骨近くを通っているので、背中が丸まったまま筋肉が硬くなっていると、切り替えのやり取りがうまくいきにくくなります。
みなみ姿勢が悪いと、切り替えの負担がさらに増えるってことですか。
けんぞう先生そういうことです。もともと温度差で切り替えの回数が増えているところに、切り替えにくい身体の状態が重なる。この組み合わせが、この時期のだるさを強めているケースは多いと感じています。
みなみ在宅ワークで丸まってる自覚があるので、耳が痛いです。
けんぞう先生責める話ではないので安心してください。むしろ、ここが分かっていれば手を打てるということでもあります。
「夏の疲れ」は、後半に蓄積のピークが来る
けんぞう先生ここまでは体温調節の話でしたが、8月後半のだるさには、もう一つ大きな要素があります。積み重なった疲れです。
けんぞう先生重なる部分はありますが、少し違います。夏バテというと暑さそのもので参っている状態を思い浮かべますが、8月後半のだるさは「ここまでずっと働き続けてきた結果」という側面が強いんです。
けんぞう先生考えてみてください。6月終わりから今日まで、身体は毎日、暑さへの対応を続けてきました。冷房の効いた室内と、外の猛暑。その温度差を出入りするたびに調整が入ります。夜も寝苦しさで睡眠が浅くなりがちで、回復しきれないまま翌日を迎える。これが2ヶ月近く続いているわけです。
みなみ言われてみると、6月の終わりからずっとですね。
けんぞう先生そうなんです。だから「暑さに慣れたはずなのにしんどい」というのは、当然の反応なんですね。慣れの問題ではなく、蓄積の問題だからです。
けんぞう先生まったく違います。むしろ、ここまでよく持たせてきたと捉えてもらった方が正確です。
寝室環境は「明け方」を基準に見直す
けんぞう先生ここからは、具体的にできることをお話ししますね。まず見直してほしいのが、寝室の環境です。
けんぞう先生今の時期はまだ冷房も冷感寝具も必要ですが、注意してほしいのが明け方です。日中の暑さに合わせた設定のまま朝を迎えると、気温が下がってくる明け方に冷えすぎることがあります。
けんぞう先生それがまさにサインです。設定温度を1度上げる、タイマーで明け方に切れるようにする、風向きを身体に直接当たらないようにする。この調整だけでも、朝の身体の重さが変わってきます。
みなみ冷感の敷きパッドはまだ使っていて大丈夫ですか。
けんぞう先生日中がこれだけ暑いうちは、まだ使ってもらって構いません。ただ、朝方に「なんだか背中が冷たい」と感じ始めたら、そこが切り替えのサインです。
けんぞう先生日中の気温ではなく、明け方の最低気温を基準にしてください。日中はまだ猛暑でも、明け方が25度を下回るようになってきたら、掛けるものを一枚足す。20度を下回るようになったら、冷感タイプの敷きパッドを普通のものに戻す。天気予報で最低気温を見る習慣をつけると、判断しやすくなります。
けんぞう先生そこが落とし穴なんです。眠っているのは夜から明け方なので、判断基準もそこに合わせる。これから9月に向けて、この差はどんどん広がっていきます。今のうちに基準を持っておくと、切り替えどきを逃さずに済みますよ。
今日からできる、負担を減らす習慣
けんぞう先生一つ目は、室内と外の温度差を広げすぎないこと。冷房の設定を極端に下げると、外に出たときの落差が大きくなり、身体の調整負担が増えます。もちろん熱中症の危険がある日は冷房を我慢しないでください。ただ、必要以上に冷やしすぎない、というバランスは意識してみてください。
けんぞう先生二つ目は、羽織るものを持ち歩くこと。単純ですが効きます。電車やお店の冷房が強い場所で、身体に冷えを直接受けさせないことで、内側の調整の回数を減らせます。
みなみ服で調整すれば、身体が調整しなくて済むってことですね。
けんぞう先生そうです。外側で減らせる負担は、外側で減らしてしまうのが賢いやり方です。
けんぞう先生三つ目は、湯船に浸かること。夏の間シャワーだけで済ませていた方が多いと思いますが、冷房で身体の芯が冷えている状態が続いているなら、ぬるめのお湯に10分ほど浸かるだけでも変わってきます。暑いから無理、という日は足湯だけでも構いません。
けんぞう先生四つ目は、背中を動かすこと。前回お話しした、胸を開く動きやわき腹を伸ばす動きです。背中まわりが硬いままだと、自律神経の切り替えがしにくい状態が続きます。一日に何度か、こまめに動かしてください。
みなみ全部やろうとすると大変そうですけど、どれか一つでもいいですか。
けんぞう先生もちろんです。むしろ全部やろうとして続かないより、一つを毎日続ける方が身体には効いてきます。一番取り入れやすいものから始めてください。
けんぞう先生そしてもう一つ。これから9月に向けて、朝晩の気温はさらに下がっていきます。今の疲れを引きずったまま季節の変わり目に入ると、寒暖差の負担が重なってさらにしんどくなります。今のうちに立て直しておくことが、秋を楽に過ごすための準備にもなりますよ。
よくある質問
Q. 毎年この時期になるのですが、体質でしょうか?
体質というより、生活環境と身体の状態の組み合わせで起きていることが多いです。特に、室内での作業時間が長い方、冷房環境に長くいた方は、温度差の影響を受けやすい傾向があります。毎年同じなら、毎年同じ条件が揃っているということでもあるので、そこを一つずつ変えていけます。
Q. だるさと眠気が同時に来るのですが、寝不足でしょうか?
睡眠時間が足りていても、その中身が浅ければ日中の眠気は出ます。温度差で自律神経の切り替えが追いつかず、夜にお休みモードへ入りきれていない可能性があります。まずは寝室環境の見直しから始めてみてください。
Q. 運動した方がいいですか?
身体を動かすこと自体は良いのですが、だるさが強い時期に急に強度の高い運動を始めると、さらに消耗することがあります。まずは歩く、背中を動かすといった軽いものから。身体が戻ってきてから強度を上げていくのがおすすめです。
Q. 子どももこの時期に体調を崩しやすいのですが、同じ理由ですか?
体温調節の負担という点では共通していますが、お子さんは大人より体温調節の機能が未熟なぶん、影響を受けやすい面があります。衣服での調整をこまめにしてあげてください。発熱や食欲低下がある場合は、季節のせいと決めつけず小児科に相談を。
Q. だるさはいつ頃まで続きますか?
気温が安定してくると落ち着いてくる方が多いです。ただ、9月に入ると今度は朝晩の冷え込みが加わり、一日の中の気温差が広がっていきます。今のだるさを「涼しくなるまでの我慢」で終わらせず、身体を立て直すきっかけにしてもらえたらと思います。
Q. 朝起きるのがつらいのですが、早く寝れば解決しますか?
睡眠時間を確保すること自体は大切ですが、時間を伸ばすだけでは足りないことが多いです。夜にお休みモードへ切り替わっていない状態だと、長く寝ても中身が浅いままになります。就寝前に背中をゆるめる、寝室の温度を見直すなど、切り替わりやすい条件を整える方が先だと考えてください。
まとめ
- 身体は気温がどうであれ体温を一定に保とうとしており、その調整にはエネルギーを使っている
- 残暑の時期は、冷房の効いた室内と猛暑の屋外を行き来するたびに切り替えが起き、それ自体が消耗になる
- 8月後半は、そこに朝晩の気温低下という新しい温度差が加わり始める時期
- 切り替えを担当する自律神経が追いつかなくなると、夜にお休みモードへ入りにくくなる
- 背中が硬いと切り替えがさらにしにくくなるため、姿勢の要素も重なる
- 6月終わりから続いてきた暑さ対応の蓄積が、後半にピークを迎える
- 対策は、寝室は明け方基準で見直す・冷やしすぎない・羽織りもの・湯船・背中を動かすこと
強い倦怠感が続く場合、発熱を伴う場合、日常生活に支障が出るほどのだるさがある場合は、夏のせいと決めつけず、医療機関を受診してください。熱中症のほか、甲状腺や貧血など、検査で分かる原因が隠れていることもあります。
そして、検査で特に異常なしと言われたのに不調が続く方、そこからが当サイトの領域の出番です。あきらめる必要はありません。気温そのものは変えられませんが、それを受け止める身体の側は、少しずつ整えていくことができます。
その不調、寝具のせいだけじゃないかもしれません。身体の状態を整えたうえで、自分に合った環境を選んでいきましょう。
※この記事の内容は一般的な情報提供であり、診断や治療の代わりにはなりません。
執筆・監修:けんぞう先生(整体師/施術歴23年・延べ4万5千人)