[#65]眠れない夜、無理に頑張らなくていい|整体師が教える「眠るための環境」の整え方
もくじ
みなみ先生、この前テレビで、睡眠研究で有名な柳沢正史教授のお話を見たんです。2026年にアルバート・ラスカー基礎医学研究賞を受賞された方だとか。それで、照明を落とすとか、寝酒はよくないとか、いくつか工夫の話をされていて、気になったので詳しく聞きたくて。
けんぞう先生それ、僕もお伝えしたかった話です。柳沢先生は、覚醒を保つ脳内物質「オレキシン」を発見された、睡眠科学の第一人者です。今日は、その考え方を、当サイトでいつもお伝えしている身体観と接続しながら、今夜からできる形で整理しますね。
みなみお願いします。
けんぞう先生先に言っておきたいのは、これから紹介する工夫は、どれも「頑張る」ものではないということです。むしろ「頑張って眠ろうとしない」ための工夫、と言った方が近いかもしれません。
結論:今夜からできることは4つ
けんぞう先生忙しい方のために、先に全体像をお伝えします。
けんぞう先生
- ①照明を落とす(就寝前、部屋の明るさを下げる)
- ②寝酒をやめる(眠りやすくなるようで、実は質が下がる)
- ③眠れない時は、無理に眠ろうとせず一度起きる
- ④決まった手順で布団に入る(入眠儀式をつくる)
みなみどれも道具を買うようなことではないんですね。
けんぞう先生そうなんです。お金をかけずに、今夜から試せることばかりです。一つずつ、なぜそれが大事なのかをお話ししますね。
①照明を落とす——「見えなくする」ではなく「量を減らす」
けんぞう先生まず照明です。ここ、誤解されやすいところなんですが、「真っ暗にしなければダメ」という話ではありません。
みなみどういうことですか?
けんぞう先生文字が読める程度の明かりがあれば十分、というのが柳沢先生のお話でした。よく「暗いところで本を読むと視力が下がる」と言われますが、これも根拠のない話だそうです。大事なのは、就寝前の1〜2時間、部屋全体を照らす強い光を、少しずつ落としていくことなんです。
みなみ完全に暗くしなくていいんですね。それなら気楽です。
けんぞう先生はい。天井の照明を消して、手元のスタンドライトだけにする。ただ、柳沢先生は、そのスタンドライトも明るすぎることが多いとおっしゃっていました。「手元用に」と選んだ照明でも、就寝前としては光量が強すぎるケースが意外と多いそうです。天井の照明を消すことに加えて、スタンドライトの明るさそのものも一段階落とす。それだけでも十分な変化です。以前、スマホの話でもお伝えしたことがあるんですが、ブルーライト対策のフィルターやナイトモードだけでは、実は入口の対策にしかなりません。画面の色より、部屋全体の光の量そのものを落とすことが本丸なんです。
みなみ秋になって朝が来るのが遅くなった、っていう話ともつながりますか?
けんぞう先生つながります。朝は光をしっかり浴びて、夜は光を落とす。この明暗のコントラストが、体内時計を整える基本なんです。
②寝酒をやめる——「寝つきが良くなる」は半分だけ本当
みなみ寝酒は、なんとなく身体に悪そうだと思ってました。
けんぞう先生ここ、正直にお話ししたいところです。お酒を飲むと寝つきが早くなったように感じるのは事実です。ただ、それは睡眠の前半だけの話なんです。
みなみ後半は違うんですか?
けんぞう先生はい。アルコールが分解される過程で、後半の睡眠が浅くなりやすいことが知られています。加えて、アルコールには利尿作用があるので、夜中にトイレが近くなって目が覚めてしまい、眠りが途切れやすくなるという側面もあります。夜中に目が覚めやすくなったり、明け方に眠りが浅くなったりする方、実は寝酒が関わっているケースは少なくありません。
みなみ「寝るために飲む」のが、逆効果になってるかもしれないんですね。
けんぞう先生そうなんです。「寝つきが良くなった」という体感だけで判断すると、後半で失っている睡眠の質に気づきにくい。ここは、今夜からやめられる工夫の中でも、変化を実感しやすい部類だと思います。
③眠れない時は、無理に眠ろうとせず一度起きる——「刺激制御」という考え方
けんぞう先生これが、今日いちばんお伝えしたい工夫です。布団に入って15〜20分経っても眠れない時は、無理に眠ろうとせず、一度布団から出てください。
みなみえ、それだと余計に寝るタイミングを逃しそうな気がします。
けんぞう先生その感覚、よく分かります。でも、これには理由があるんです。眠れないまま布団で何時間も過ごしていると、脳や体が「そこは眠る場所ではない」と学習してしまうことがあります。
みなみどういうことですか?
けんぞう先生パブロフの犬の実験、聞いたことありますか。ベルの音と食事を結びつけて覚えさせる、あの実験です。布団も同じで、「布団に入る=眠る」という結びつきが本来はあるはずなのに、「布団に入る=眠れずに悶々とする」という経験を繰り返すと、その結びつきの方が強くなってしまうんです。
みなみ布団が「眠れない場所」になっちゃうんですね。
けんぞう先生そうなんです。だから、眠れない時に大事なのは、その結びつきを壊さないことです。一度布団から出て、暗い場所で静かに過ごし、眠くなったら戻る。この繰り返しが、「布団=眠る場所」という結びつきを守ってくれます。
みなみ夜勤の方とか、眠れないと焦ってしまう方には、簡単ではないですよね。
けんぞう先生おっしゃる通りです。すぐに実践するのが難しい状況の方もいると思います。それでも、少しでも本来の自然なリズムに近づける工夫として、知っておいてもらえたら嬉しいです。
④決まった手順で布団に入る——「入眠儀式」をつくる
けんぞう先生最後は、布団に入るまでの手順を決めておくことです。
みなみ手順、というのは?
けんぞう先生食事を終える、お風呂に入る、歯を磨く、少し本を読む、お気に入りのパジャマに着替える、部屋の明かりを落とす、布団に入る。この流れを毎晩なるべく同じ順番で繰り返すんです。

みなみルーティンを作るってことですね。
けんぞう先生はい。これも③と同じ理屈です。決まった手順を繰り返すことで、身体が「この流れの最後には眠りが来る」と学習していきます。パジャマに着替えるという行為そのものが、身体にとって「そろそろ眠る時間だ」という合図になっていくんです。
みなみ毎日きっちり同じ時間にやらないとダメですか?
けんぞう先生時間よりも「順番」が大事です。多少時間がずれても、同じ手順をなぞることに意味があります。忙しい日で全部はできなくても、「パジャマに着替えたら照明を落とす」くらいの、最後の2つだけでも構いません。
みなみハードルを下げてもらえると、続けられそうです。
けんぞう先生それでいいんです。完璧を目指すと、続かなくなってしまいますから。
なぜ、これらの工夫が身体に効いてくるのか
みなみここまで聞いてきて、どれも「環境」の話だったんですけど、これって当サイトでいつも話している「姿勢」とか「自律神経」の話とはどう繋がるんですか?
けんぞう先生いい質問です。実は、根っこは同じところにあります。以前お話ししたように、自律神経には昼の「緊張モード」と夜の「お休みモード」があって、この切り替えがうまくいかないと、寝ても疲れが取れない状態になりやすいんです。
みなみ姿勢が崩れると、その切り替えがじゃまされる、という話でしたよね。
けんぞう先生そうです。今日紹介した4つの工夫は、その切り替えを外側からサポートするものなんです。強い光は脳を覚醒させ、緊張モードを長引かせます。寝酒は一時的にリラックスさせるようで、実は身体の回復のリズムを乱します。眠れないまま布団で力んでいる時間も、緊張モードを引きずる原因になります。
みなみ全部、緊張モードからお休みモードへの切り替えを、じゃましてたものだったんですね。
けんぞう先生その通りです。だからこそ、姿勢や呼吸を整えることと、今日お話しした環境の工夫は、同じ目的に向かった両輪なんです。片方だけでは、なかなか変わらないことがあります。
みなみさんの場合で当てはめると
みなみ私の場合、どこから始めればいいでしょう。
けんぞう先生今のみなみさんの生活を考えると、こんな順番はどうでしょうか。
けんぞう先生
- まず①から:子どもたちを寝かしつける時間帯に、リビングの照明を一段落とす。授乳や寝かしつけと同時に始められる
- ②は今夜から:寝酒の習慣がなければ、そのままでOK。もしあれば、まず頻度を減らしてみる
- ④を軽く:「パジャマに着替えたら、スマホを置いて照明を落とす」の2手順だけ、毎晩なるべく同じ順番で
- ③は困った時の切り札として:寝かしつけ後、なかなか自分が眠れない夜があれば、無理に頑張らず一度起きる、という選択肢を持っておく
みなみこれなら、今の生活に無理なく足せそうです。
けんぞう先生全部を一気にやらなくていいんです。一つでも試してもらえたら、それで十分な一歩です。
こんな時は、まず医療機関へ
次のような場合は、環境の工夫だけで様子を見るより先に、医療機関で相談してください。
- 眠れない状態が長期間(1ヶ月以上)続いている
- 日中の強い眠気や倦怠感で、生活に支障が出ている
- いびきが強い、睡眠中に呼吸が止まっていると指摘されたことがある
- 気分の落ち込みが長く続いている
- 睡眠薬や睡眠導入剤を使用している、または使用を検討している
- 上記の工夫を試しても、何週間も変化を感じられない
これらは医療機関で相談すべき状態です。
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まとめ
けんぞう先生今日のポイントをまとめます。
- 照明は「真っ暗」ではなく「量を落とす」ことが大事。文字が読める程度の明かりで十分
- 寝酒は寝つきを早めるように感じても、睡眠後半の質を下げやすい
- 眠れない時は無理に頑張らず、15〜20分で一度布団から出る(刺激制御)
- 決まった手順で布団に入る「入眠儀式」をつくると、身体が眠りのタイミングを学習しやすくなる
- どれも今夜からお金をかけずに試せる工夫
けんぞう先生睡眠科学の知見と、僕たちが施術の現場で見てきた身体の反応は、実はよく一致しています。今日紹介した工夫は、どれも「環境を、本来の自然なリズムに近づける」ためのものです。焦らず、一つずつ試してみてください。
強い痛みやしびれがある場合は、まず医療機関を受診してください。検査で異常なしと言われたのに不調が続く方、そこからが当サイトの領域の出番です。あきらめる必要はありません。
その不調、寝具のせいだけじゃないかもしれません。身体の状態を整えた上で、自分に合った環境を選ぶことが大切です。
執筆・監修:けんぞう先生(整体師/施術歴13年・延べ2万7千人以上)
※この記事の内容は一般的な情報提供であり、診断や治療の代わりにはなりません。
よくある質問
Q. 照明を落とすのは、何時くらいから始めればいいですか?
就寝予定の1〜2時間前を目安にしてみてください。厳密な時間より、寝る前の時間帯に少しずつ暗くしていく、という流れを意識することが大切です。
Q. 寝酒をやめたら、寝つきが悪くなりました。どうすればいいですか?
急にやめると一時的に寝つきにくく感じることはあります。焦らず、他の工夫(照明を落とす、入眠儀式をつくる)と合わせて、少しずつ身体を慣らしていくのがおすすめです。長引く場合は、無理をせず専門家に相談してください。
Q. 一度布団から出た後、また眠れなかったらどうすればいいですか?
その場合も、無理に眠ろうとせず、暗い場所で静かに過ごしてから、眠くなったタイミングで布団に戻ってください。この繰り返し自体が、布団と眠りの結びつきを整えていくプロセスです。
Q. 入眠儀式は、何分くらいかければいいですか?
時間の長さより、手順の順番を大切にしてください。5分程度の簡単な手順でも、毎晩繰り返すことに意味があります。

