睡眠・自律神経

[#52]秋になると朝がつらいのはなぜ?日照時間と身体の関係

秋の朝、カーテンを開けて朝の光を浴びる

文=けんぞう(美容整体師・小顔矯正士/施術歴13年・延べ2万7千人以上)

「暑さが落ち着いてきたのに、朝起きるのが前よりつらい」。9月から10月にかけて、こうした声が増えてきます。過ごしやすくなったはずなのに、なぜ朝だけ重くなるのか。今日はその仕組みと、対策の順番についてお話しします。
みなみ
みなみけんぞう先生、最近ちょっと困ってることがあって。涼しくなって寝苦しさはなくなったのに、朝起きるのが前よりつらいんです。
けんぞう先生
けんぞう先生この時期、本当に多い相談です。夏の暑さがピークだった頃より、今のほうがしんどいという方は珍しくありません。
みなみ
みなみ子どもたちの用意もあるので、朝は起きなきゃいけないんですけど、身体が全然動かなくて。上の子に「ママまだ寝てる」って何回も起こされました。
けんぞう先生
けんぞう先生それはお困りですね。ただ、意志の問題ではないんです。この時期特有の理由があります。

秋に朝がつらくなる、いちばん大きな理由

けんぞう先生
けんぞう先生まず、日の出の時刻を思い出してみてください。夏至の頃と今とで、朝の明るさは同じでしょうか。
みなみ
みなみあ、全然違います。夏は5時前から明るかったのに、今は6時でもまだ薄暗いですよね。
けんぞう先生
けんぞう先生そこが核心です。日の出が遅くなるということは、起きる時刻に浴びる光の量が減るということなんです。
みなみ
みなみ光の量、ですか。
けんぞう先生
けんぞう先生はい。私たちの身体は、光を合図にして「一日の始まり」を認識しています。朝、目から光が入ることで、身体は活動モードへの切り替えを始めるんですね。
みなみ
みなみ目覚まし時計じゃなくて、光で起きてるってことですか。
けんぞう先生
けんぞう先生時計は「意識」を起こすものですが、光は「身体」を起こすものです。この2つは別なんですよ。だから、目は覚めているのに身体がついてこない、という状態が起きます。
みなみ
みなみそれ、まさに今の私です。

朝の光が、身体にしていること

みなみ
みなみ光を浴びると、身体の中では何が起きてるんですか。
けんぞう先生
けんぞう先生大きく2つあります。ひとつは、体内時計のリセット。私たちの身体のリズムは、放っておくと少しずつずれていくのですが、朝の光がそれを毎日調整してくれます。
けんぞう先生
けんぞう先生もうひとつは、活動モードへの切り替えです。以前お話しした自律神経の話を覚えていますか。お休みモードから活動モードへ、朝のうちにしっかり切り替わることで、日中の身体が動きやすくなります。
みなみ
みなみ朝の光が、そのスイッチになってるんですね。
けんぞう先生
けんぞう先生そうです。そして興味深いのは、朝の光が夜の眠りにも関わっているということ。朝しっかり光を浴びた日は、夜に自然と眠くなりやすい。逆に朝の光が足りないと、夜になっても身体が休むモードに入りにくくなります。
みなみ
みなみ朝が夜に影響するんですか。
けんぞう先生
けんぞう先生一日のリズムは朝から始まっているので、朝の入り方が崩れると、その日一日ぜんぶがずれていきます。夜眠れないという悩みの原因が、実は朝にあったというケースは少なくありません。

秋は、この仕組みが崩れやすい時期

けんぞう先生
けんぞう先生ここまでを踏まえると、秋に何が起きているか見えてきます。
けんぞう先生
けんぞう先生日の出が遅くなり、起床時の光が減る。すると体内時計のリセットが弱くなり、活動モードへの切り替えも鈍くなる。その結果、朝の身体が重い。さらに夜の寝つきにも影響が出て、翌朝がまたつらくなる。
みなみ
みなみ悪循環になってるんですね。
けんぞう先生
けんぞう先生そうなんです。しかも秋は、日照時間が短くなっていく季節です。10月、11月と進むにつれて、この傾向は強まっていきます。
みなみ
みなみ言われてみると、子どもたちも朝の機嫌が悪くなってきた気がします。夏は勝手に早起きしてたのに、最近は起こしても布団から出てこなくて。
けんぞう先生
けんぞう先生お子さんも同じ仕組みで動いていますからね。夏は早朝から部屋が明るかったので、自然に目が覚めていた。それが今は、起きる時間になっても薄暗い。身体からすると「まだ夜」なんです。
みなみ
みなみああ、だから起きないんですね。怠けてるわけじゃなくて。
けんぞう先生
けんぞう先生そうです。しかもお子さんは大人より睡眠を必要としますし、リズムの影響も受けやすい。朝の支度が進まなくてイライラする、というのは、この時期のご家庭でよくある光景だと思います。
みなみ
みなみまさにうちです。私も余裕がなくて、つい強く言っちゃって。
けんぞう先生
けんぞう先生それは仕方ないですよ。ただ、原因が分かっていれば対策も変わります。後半でお話ししますが、家族全員に共通して使える方法があります。
みなみ
みなみこれからもっとつらくなるってことですか。
けんぞう先生
けんぞう先生何もしなければ、その可能性はあります。ただ、逆に言えば、今のうちに対策を始めれば、冬に向かう時期を楽に過ごしやすくなるということでもあります。

「光を浴びましょう」で終わらせたくない理由

みなみ
みなみじゃあ、朝カーテンを開けて光を浴びればいいんですね。
けんぞう先生
けんぞう先生それは正しい対策です。ただ、私が現場で見ていると、それだけでは変わらない方もいらっしゃるんです。
みなみ
みなみえ、光を浴びてもですか。
けんぞう先生
けんぞう先生はい。ここが今日いちばんお伝えしたい部分です。光を浴びる、という行動は「入力」です。でも、それを受け取って身体を切り替えるのは、身体の側の仕事なんですね。
みなみ
みなみ受け取る側、ですか。
けんぞう先生
けんぞう先生以前、呼吸のお話をしたのを覚えていますか。背中が丸まったまま固まっていると、肋骨まわりが動きにくくなって呼吸が浅くなる。そして自律神経の切り替えもうまくいかなくなる、という話です。
みなみ
みなみはい、覚えてます。
けんぞう先生
けんぞう先生朝の切り替えも同じなんです。光という合図が来ても、身体の側が固まったままだと、活動モードへの切り替えがスムーズに進みません。「光を浴びているのに、朝がつらいまま」という方は、ここが引っかかっていることが多いんです。
みなみ
みなみ入力はできてるけど、身体が受け取れてないってことですか。
けんぞう先生
けんぞう先生そういうイメージです。だから対策は2つセットで考えてほしいんです。光を入れること、そして受け取る身体を動かすこと。片方だけでは、変化を感じにくいことがあります。
みなみ
みなみ具体的には、身体のどこが固まってると受け取りにくいんですか。
けんぞう先生
けんぞう先生いちばん多いのは背中です。日中デスクワークやスマホ、抱っこで前かがみの時間が長いと、背中側の筋肉が縮んだまま固まります。自律神経は背骨近くを通っているので、そこが硬いままだと切り替えのやり取りがしにくくなる。
みなみ
みなみ在宅ワークで丸まってる自覚があるので、耳が痛いです。
けんぞう先生
けんぞう先生責める話ではないので安心してください。むしろ、朝の重さの原因が「気合いの問題」ではなく「身体の形の問題」だと分かれば、やることがはっきりします。気合いは足せませんが、背中は動かせますから。

夏の疲れが、まだ残っている時期でもある

けんぞう先生
けんぞう先生もうひとつ、この時期特有の要素があります。夏の疲れの持ち越しです。
みなみ
みなみ前にお話ししてくれた、冷房と外気の温度差のやつですね。
けんぞう先生
けんぞう先生そうです。6月終わりから9月頃まで、身体は暑さと温度差にずっと対応し続けてきました。その負債が抜けきらないうちに、今度は日照時間の短縮という新しい条件が加わる。
みなみ
みなみ立て続けなんですね。
けんぞう先生
けんぞう先生だから秋は、身体にとってなかなかハードな季節なんです。「涼しくなったのに調子が上がらない」というのは、決しておかしなことではありません。

今日からできること

けんぞう先生
けんぞう先生ここからは具体的な話をしますね。順番が大事なので、そこも含めてお伝えします。
けんぞう先生
けんぞう先生一つ目は、起きたらまずカーテンを開けること。曇りの日でも構いません。屋外の光は、室内の照明よりずっと強いので、窓際に立つだけでも意味があります。数分で十分です。
みなみ
みなみ子どもを起こす前に、まずカーテンですね。
けんぞう先生
けんぞう先生それがいいと思います。お子さんの体内時計にとっても同じことが言えるので、家族全員にとってプラスになります。
みなみ
みなみ起こしてから開けるんじゃなくて、先に開けるんですね。
けんぞう先生
けんぞう先生順番が逆だと効きにくいんです。暗い部屋で名前を呼んでも、身体はまだ夜だと思っている。先に部屋を明るくしておけば、起こす前から身体の準備が始まります。お子さんの寝室のカーテンも、先に開けておくといいですよ。
みなみ
みなみそれなら今日からできそうです。
けんぞう先生
けんぞう先生二つ目は、光を浴びながら背中を動かすこと。ここが先ほどお話しした「受け取る側」の対策です。窓際で大きく伸びをする、肩を回す、深呼吸をする。これだけで、光の合図が身体に届きやすくなります。
みなみ
みなみ光と身体、セットなんですね。
けんぞう先生
けんぞう先生そうです。カーテンを開けて、そのまま伸びをする。この2つを1セットにしてしまうと、習慣として続きやすくなりますよ。
けんぞう先生
けんぞう先生三つ目は、起床時刻をなるべく一定に保つこと。休日に大きく寝坊すると、せっかく整えたリズムがずれます。平日との差は1時間以内に収めるのが理想です。
みなみ
みなみ休日くらいは寝ていたいんですけど。
けんぞう先生
けんぞう先生その気持ちは分かります。ただ、休日に寝だめをした翌週の月曜がつらいのは、これが理由なんです。どうしても眠りたい日は、朝は一度いつも通りに起きて光を浴びてから、昼寝で補うほうが、リズムは崩れにくくなります。
けんぞう先生
けんぞう先生四つ目は、夜の光を減らすこと。朝の光が大事だという話をしましたが、裏返せば夜の光は身体を混乱させます。寝る前のスマホは、身体にとっては「まだ昼だ」という信号になってしまいます。
みなみ
みなみ朝は浴びる、夜は減らす。セットで考えるんですね。
けんぞう先生
けんぞう先生その通りです。片方だけだと効きにくいので、両方を意識してみてください。
みなみ
みなみ子どもの寝る前のテレビも、控えたほうがいいですか。
けんぞう先生
けんぞう先生理想を言えばそうです。ただ、現実的に難しい日もありますよね。全部やめるのが無理なら、寝る直前の30分だけは画面から離れる、部屋の照明を一段暗くする、それくらいから始めてみてください。ゼロか百かで考えると続きません。
みなみ
みなみそれなら守れそうです。
けんぞう先生
けんぞう先生完璧を目指さないことが、この手の習慣ではいちばん大事です。

よくある質問

Q. 出勤前に外に出る時間がありません。窓際でも意味がありますか?

あります。屋外に比べると弱くなりますが、室内の照明とは比べものにならない明るさがあります。カーテンを開けて窓のそばで数分過ごすだけでも、何もしないのとは違います。

Q. 曇りや雨の日はどうすればいいですか?

曇りの日でも、屋外の明るさは室内照明よりずっと強いです。天気が悪い日ほど窓際に立つ時間を少し長めにとる、くらいの意識で大丈夫です。

Q. 朝が弱いのは体質でしょうか?

もともとのリズムの傾向には個人差がありますが、体質だから変えられない、というものでもありません。特に季節によって波がある場合は、環境の影響を受けている可能性が高いです。まずは光と身体、両方から整えてみてください。

Q. どのくらい続ければ変化を感じますか?

体内時計のリズムは、数日単位で少しずつ動いていくものです。1日やって翌朝スッキリ、という性質のものではありません。最低でも1〜2週間は続けて、朝の起きやすさを見てみてください。ただし、続けている間に日照時間はさらに短くなっていくので、「変わらない」のではなく「悪化を抑えている」という場合もあります。

Q. 子どもも同じように朝がつらそうです。

お子さんも同じ仕組みで動いています。朝カーテンを開けて部屋を明るくすること、夜は照明を落として画面を見せないこと。大人と同じ対策が有効です。ただし、日中の眠気が強い、学校に行きたがらないといった状態が続く場合は、小児科や専門機関に相談してください。

Q. 気分まで落ち込んでいる気がします。

季節によって気分の落ち込みが強く出る方もいらっしゃいます。日常生活に支障が出るほどの落ち込みや、意欲がわかない状態が2週間以上続く場合は、心療内科や精神科への相談を検討してください。姿勢や生活リズムの話として抱え込まないでほしい領域です。

まとめ

朝起きられない状態が長く続く場合、日中の強い眠気がある場合、気分の落ち込みが2週間以上続く場合は、季節のせいと決めつけず、医療機関を受診してください。睡眠時無呼吸や甲状腺の疾患、季節性のうつなど、検査や治療が必要な原因が隠れていることもあります。

そして、検査で特に異常なしと言われたのに不調が続く方、そこからが当サイトの領域の出番です。あきらめる必要はありません。日照時間は変えられませんが、それを受け取る身体の側は、少しずつ整えていくことができます。

その不調、寝具のせいだけじゃないかもしれません。身体の状態を整えたうえで、自分に合った環境を選んでいきましょう。


※この記事の内容は一般的な情報提供であり、診断や治療の代わりにはなりません。

執筆・監修:けんぞう先生(整体師/施術歴13年・延べ2万7千人以上)