#6 仰向けで寝れないのはなぜ?体が緊張したままかも。寝る前1分の深呼吸から
導入
けんぞう先生、前から気になってたことがあって。私、仰向けで寝ようとすると、なんだか落ち着かないんです。腰のあたりがそわそわするというか、体の置き場がないというか…。気づくといつも横向きになっちゃってて。
先生
ああ、それはよく聞くお悩みですよ。「仰向けが一番いいって聞くのに、自分は仰向けだと逆に休まらない」という方、実はすごく多いんです。
そうなんです! 仰向けがいいって言うから頑張って仰向けになるんですけど、なんか苦しくて。私の体、どこかおかしいんでしょうか…。
先生
おかしくないですよ。ただ、体からの大事なサインではあります。今日はその理由と、今夜からできる「寝る前1分の準備」の話をしますね。道具もいらないし、布団の上でできますから。
そもそも、なぜ「仰向けが基本」と言われるのか
先生
まず前提から。人間の背骨って、横から見るとまっすぐじゃなくて、ゆるやかなS字のカーブを描いているんです。首のところで少し前に、背中で少し後ろに、腰でまた少し前に。
S字…。まっすぐが正解じゃないんですね。
先生
そうなんです。このS字があるおかげで、ボウリングの球くらい重い頭を、筋肉に頼らず「骨で」支えられる。仰向けは、このS字カーブを保ったまま眠りに入りやすい姿勢なんです。体の重さも背中全体に分散されるし、気道も確保しやすいので呼吸も深く取りやすい。
じゃあやっぱり、仰向けで寝られない私はダメってことじゃ…。
先生
いえいえ、そこが今日一番伝えたいところです。仰向けで寝られないのは、あなたの寝方が悪いんじゃなくて、「今の体の形」が仰向けに合わなくなっているだけなんですよ。
仰向けが辛いのは「背中が丸くなった体」のサイン
今の体の形、ですか?
先生
はい。みなみさん、日中はずっとパソコンかスマホ、それに抱っこですよね。
…はい。気づくと肩が前に出て、背中も丸まってます。
先生
その姿勢が長く続くと、背中が丸まった形で筋肉がこわばって、肋骨まわりもぎゅっと縮こまってきます。その体のまま仰向けになるとどうなるか。丸まった背中と布団の間に隙間ができて(腰が浮いて)、体がうまく布団に預けられないんです。
あ…! だから落ち着かないんだ。体が浮いてる感じがするのはそれか。
先生
そうなんです。布団に体を預けられないと、寝ている間も背中や腰の筋肉がずっと踏ん張り続けることになる。本来「骨で支える」はずの体が「筋肉で支える」体になってしまっていて、横になっても筋肉が休めない。これが「仰向けだと落ち着かない」の正体です。
寝てるのに筋肉は働きっぱなし…。そりゃ落ち着かないわけだ。
先生
横向きになると丸まった背中のままでいられるので、一時的にはラクなんですよ。だから体は自然と横向きを選ぶ。ただそれは「今の体に合わせた応急処置」であって、根っこの部分はそのままなんです。
仰向けで寝れないのは、寝具の問題ではなく「背中が丸まって縮こまった体」のサイン。丸まった体は布団に預けられず、筋肉が休めないまま夜を過ごすことになる。
体が「緊張モード」のままだと、眠り全体が浅くなる
先生
それともうひとつ。この話は「仰向けが苦手」だけで終わらないんです。
というと?
先生
体には、昼の「緊張モード」と夜の「お休みモード」を切り替えるスイッチのような仕組みがあります。自律神経という言葉、聞いたことありますか?
あります。乱れるとよくない、みたいな…。
先生
その自律神経の通り道は、背骨の近くにあるんです。だから背中まわりの筋肉がガチガチにこわばっていると、夜になってもこのスイッチの切り替えがうまくいきにくい。体が緊張モードのまま布団に入ることになります。
それって、眠りにも影響しますよね…?
先生
はい。本来、眠っている間はお休みモードに切り替わって、筋肉をゆるめて回復にあてる時間です。ところが緊張モードのまま眠ると、眠っているのに体は力み続けている状態になりやすい。「寝たのに疲れが取れない」と感じる背景には、この連鎖があることが多いんです。
仰向けで寝れない→背中がこわばってる→緊張モードのまま寝てる→朝もスッキリしない…。全部つながってるんですね。
先生
そうなんです。だから「仰向けで寝れない」は、実は体全体からの分かりやすいお知らせなんですよ。詳しくは「寝ても疲れが取れない」の記事でもお話ししていますが、今日はここから先、「じゃあ今夜なにをするか」の話をしますね。
今夜からできる:寝る前1分の「けんぞう式深呼吸」
ぜひ! でも私、ストレッチとか続いたためしがなくて…。子どもを寝かしつけたらもう、自分も力尽きてるんです。
先生
大丈夫、今日お伝えするのは布団に入ってからできるものです。むしろ「力尽きてる状態」からそのまま始められます。やることはひとつ、深呼吸です。
深呼吸…? それだけでいいんですか?
先生
「それだけ」と思うでしょう。でも私は施術歴23年、延べ4万5千人の体と向き合ってきて、寝る前の習慣としてまずお伝えするのはこれなんです。理由は2つ。ひとつは、縮こまった肋骨まわりを内側からゆるめられること。もうひとつは、呼吸が自律神経のスイッチに自分で触れられる数少ない方法だからです。
スイッチに、自分で触れる…。
先生
緊張モードとお休みモードの切り替えは、普段は自分の意思ではコントロールできません。でも呼吸だけは別で、意識的にゆっくり深く行うことで、お休みモードに切り替わりやすい状態を自分でつくれるんです。
やり方(布団の上で・約1分)
先生
やり方を説明しますね。ポイントは「吸い方」より「吐き方」です。
- 仰向けに寝ます。 腰が浮いて辛い人は、膝を立ててOKです。膝を立てると腰と布団の隙間が減って、ぐっとラクになります。
- 鼻から、深くしっかり吸います。 胸だけでなく、肺全体をふくらませるイメージで。肋骨まわりが内側から広がる感じを味わってください。
- 口から「ストン」と脱力しながら吐きます。 ここが一番大事。ゆっくり長く吐こうと頑張らなくていいんです。肩も胸もお腹も、全部の力を手放すように、ストンと。
- 最後まで吐き切ります。 吐き切ると、次の息は勝手に入ってきます。
- これを 3〜5回ほど 繰り返します。回数は目安なので、途中で眠くなったらそのまま寝てしまって構いません。
「ストンと脱力」…。深呼吸って、吐くのも頑張るものだと思ってました。ふーっと長く細く、みたいな。
先生
そこがよくある誤解なんです。吐くのを頑張ると、それ自体が力みになってしまう。大事なのは、吐く瞬間に体の力ごと手放すこと。息と一緒に肩の力、背中の力、顔の力まで下ろしていく。この「脱力して吐き切る」が、筋肉がゆるみやすい状態、お休みモードに切り替わりやすい状態をつくってくれます。
吸うのはしっかり、吐くのはストン。頑張るのは半分だけでいいんだ。なんか、それなら続けられそう。
先生
それでいいんです。繰り返すうちに、最初は浮いていた背中が少しずつ布団に沈んでいく感覚が出てくる人が多いですよ。「布団に体を預けられる」感覚、ぜひ味わってみてください。
深呼吸を助ける、入眠姿勢のふたつの工夫
先生
あわせて、仰向けで眠りに入りやすくする小さな工夫もふたつ紹介します。
お願いします!
先生
ひとつめは、タオルの使い方です。理想の仰向けは、膝の下に何も置かず、脚を自然に伸ばして全身の力を抜ける状態。ただ、腰が浮いて辛いうちは、膝の下に低めにたたんだタオルケットを入れて構いません。膝が少し曲がると腰まわりの張りがやわらいで、腰と布団の隙間が埋まりやすくなります。深呼吸の習慣で体がゆるんできたら、少しずつ外していけるのが理想です。それから、丸めたタオルを首の下に入れるのもおすすめです。首の自然なカーブが支えられて顎がわずかに上がり、呼吸の通り道が確保されやすくなります。
膝のタオルは、さっきの「膝を立てる」の寝落ちしても大丈夫バージョンですね。
先生
そのとおり。ふたつめは、枕の高さを見直すこと。実は、枕が高すぎると頭が前に押されてあごが引けて、仰向けが苦しくなります。「仰向けが苦手で横向きばかり」という人の中には、枕の高さが横向き向きになっているケースも結構あるんです。枕の高さと首・肩の関係は、別の記事で詳しくお話ししています。
枕かぁ…。うち、結婚したときに買ったやつをずっと使ってます。
先生
ただ、順番だけは忘れないでください。先に体、それから寝具です。縮こまった体のままだと、どんな枕でも「なんか合わない」が続きやすい。まず深呼吸で体をゆるめる習慣をつくって、その上で自分に合った枕を選ぶ。この順番が大切です。
大事な注意:仰向けにこだわらなくていい人もいます
先生
最後に、これはとても大事な話です。仰向けが合わない人も、実際にいます。
え、そうなんですか?
先生
はい。たとえば、いびきを強く指摘される方や、睡眠中に呼吸が止まっていると言われたことがある方。こういう方は、仰向けだと気道がふさがりやすくなることがあるので、無理に仰向けを目指さないでください。横向きのほうが呼吸を確保しやすい場合があります。
そういう場合はどうすれば…。
先生
まず医療機関に相談してください。睡眠時無呼吸症候群という、医療で検査と対処ができる領域の話ですから。私たちのような手技によるケアの出番と、医療の出番は違います。ここを混同しないことが、遠回りに見えて一番の近道です。
役割が違うんですね。全部整体でなんとか、じゃなくて。
先生
そうです。この記事でお話しした深呼吸や姿勢の工夫は、「検査で異常はないのに、仰向けが落ち着かない・体が緊張したまま」という方に向けたものだと思ってください。妊娠中の方も、お腹が大きくなってからの仰向けは負担になることがあるので、無理をせず横向きなどラクな姿勢を優先してくださいね。
まとめ:仰向けで寝れないのは、体からのお知らせ
先生
今日の話をまとめますね。
- 仰向けで寝れないのは、寝方の問題ではなく背中が丸まって縮こまった体のサイン
- 丸まった体は布団に体重を預けられず、眠っている間も筋肉が休めない
- 背中まわりのこわばりは、緊張モード/お休みモードの切り替えのしにくさにもつながる
- 今夜からできるのは、布団の上でのけんぞう式深呼吸——鼻から深くしっかり吸って、口から「ストン」と脱力して吐き切る、3〜5回
- 補助として首下・膝下のタオルと枕の高さの見直し。ただし順番は「先に体、それから寝具」
- いびき・無呼吸の指摘がある人は仰向けにこだわらず、まず医療機関へ
仰向けで寝れない自分を責めなくていいんだって分かって、ちょっとホッとしました。今夜、寝かしつけのあとにさっそくやってみます。ストンと、ですね。
先生
はい、ストンと、です。うまくやろうとしなくていいですからね。息を吐くたびに、今日一日がんばった分の力を、少しずつ布団に下ろしていってください。