姿勢・骨格

[#10]在宅ワークの肩こりは「座り姿勢」から?整体師が教える負担をためない座り方と1分リセット

文=けんぞう(美容整体師・小顔矯正士/施術歴23年・延べ4万5千人)

在宅ワークになってから、夕方の肩の重さがひどくなった気がする。マッサージに行っても数日で戻ってしまう。そんな肩こりは、実は仕事中の「座り姿勢」で毎日少しずつ作られているのかもしれません。こんにちは、整体師のけんぞうです。施術歴23年・延べ4万5千人の身体と向き合ってきました。この記事では、肩こりが座っている間に育っていく仕組みと、負担をためにくい座り方、仕事の合間にできる1分リセットをお伝えします。
みなみ
みなみ先生、聞いてください。在宅ワークになってから、肩こりが明らかにひどくなったんです。夕方には肩から首がガチガチで…。通勤がなくなって楽になるはずだったのに、おかしくないですか?
けんぞう先生
けんぞう先生いえ、実はぜんぜんおかしくないんです。通勤って、歩いたり立ったり、意外と身体を動かす時間だったんですよ。それが無くなって、朝から晩まで座りっぱなし。みなみさんの肩こりは、その「座っている時間」の中で毎日コツコツ作られている可能性が高いです。
みなみ
みなみ座ってるだけなのに、ですか? 何も重いものを持ってないのに…。
けんぞう先生
けんぞう先生そこなんです。実は「何も持っていない」は正確じゃなくて、みなみさんは毎日、ボウリングの球くらい重いものをずっと持ち上げています。

肩こりの正体:頭という「ボウリングの球」を筋肉で持ち続けている

みなみ
みなみボウリングの球…? 持ってませんよ?
けんぞう先生
けんぞう先生頭です。人間の頭って、だいたいボウリングの球ほどの重さがあるんですね。本来、この重い頭は背骨の上に「骨で」乗せて支えるようにできています。背骨はまっすぐな棒ではなくて、ゆるやかなS字カーブを描いていて、このカーブがバネのように働くから、筋肉ががんばらなくても頭を支えられる。これが人間の身体の基本設計です。
みなみ
みなみ骨で支える、ですか。あんまり意識したことなかったです。
けんぞう先生
けんぞう先生ところが、座って画面に集中していると、だんだん頭が前に出てきます。スマホをのぞき込む姿勢も同じですね。頭が前に出るほど、背骨の上に乗せて支えることができなくなって、代わりに首の後ろから肩、背中の筋肉が「落ちないように引っ張って」支えることになる。
みなみ
みなみあ…。それってつまり、筋肉がずっとボウリングの球を持ってる状態…?
けんぞう先生
けんぞう先生その通りです。たとえば買い物袋も、身体に引き寄せて持てば楽ですが、腕を前に伸ばして持ったらすぐつらくなりますよね。頭が前に出るというのは、あれを首と肩の筋肉で一日中やっているようなものなんです。「骨で支える身体」が「筋肉で支える身体」になってしまうと、筋肉に休む時間がなくなる。これが、何も持っていないのに肩がこる正体です。
みなみ
みなみマッサージしてもすぐ戻るのは…。
けんぞう先生
けんぞう先生原因が「毎日の座り方」の側にあるからです。筋肉を一時的にゆるめても、翌日また同じ姿勢で何時間も過ごせば、同じ場所に同じ負担がかかります。だから責めるべきはみなみさんの肩ではなくて、座り方と環境のほう。ここから、それを一緒に見直していきましょう。

負担をためにくい座り方:見るのは「骨盤・画面・ひじ」の3つだけ

けんぞう先生
けんぞう先生正しい座り方というと背すじをピンと伸ばすイメージがあると思いますが、力で伸ばした姿勢は長続きしません。ポイントは、頭を「骨の上」に戻しやすい土台を作ること。チェックするのは3つだけです。

①骨盤:土台を立てる

けんぞう先生
けんぞう先生いちばんの土台は骨盤です。椅子に浅く腰かけて背もたれに寄りかかると、骨盤が後ろに倒れます。骨盤が倒れると、その上の背中は丸くなり、丸くなった背中のぶん、頭は前に出る。つまり頭の位置は、骨盤から順番に決まっていくんです。
みなみ
みなみ頭だけ引っ込めようとしてもダメなんですね。
けんぞう先生
けんぞう先生そうなんです。座るときは、お尻を椅子の奥までしっかり入れて、坐骨──お尻の下にあるゴリゴリした2つの骨ですね──で座面を垂直に押すイメージ。骨盤が立つと、背骨のS字カーブが自然に戻りやすくなって、頭が骨の上に乗りやすくなります。
みなみ
みなみやってみると…あ、勝手に背すじが起きる感じがします。
けんぞう先生
けんぞう先生それが「力で伸ばす」と「土台から整う」の違いです。がんばって伸ばした背すじは数分で崩れますが、骨盤から作った姿勢は保ちやすいんですよ。

②画面:目線の高さまで持ち上げる

けんぞう先生
けんぞう先生次は画面の高さです。ノートパソコンをそのまま机に置くと、画面が低いので、必ず頭が下を向いて前に出ます。どんなに骨盤を立てても、画面が低ければ数分で元通りです。
みなみ
みなみまさにノートパソコン直置きです…。
けんぞう先生
けんぞう先生画面の上端が、目の高さか、そのすこし下に来るのが目安です。専用のスタンドがなくても、雑誌や箱を重ねて底上げすれば十分。その場合は外付けのキーボードがあると、手の位置も無理がなくなります。

③ひじ:腕の重さを机に預ける

けんぞう先生
けんぞう先生最後はひじです。腕って、片方だけで意外と重さがあるんですね。ひじが宙に浮いたままタイピングをしていると、その腕の重さを肩の筋肉が一日中吊り続けることになります。
みなみ
みなみ頭だけじゃなくて腕も吊ってたんですか…。肩、働きすぎでは。
けんぞう先生
けんぞう先生本当に働き者なんです。だから、ひじから前腕を机やアームレストに預けて、肩の力がすとんと抜ける高さに椅子と机を合わせてください。ひじの角度が90度くらいになるのが目安です。肩がすくんで耳に近づいているようなら、机が高すぎるか椅子が低すぎるサインですよ。

「正しい姿勢」より大事なこと:1時間に1回、リセットする

みなみ
みなみ骨盤・画面・ひじ…。よし、明日から完璧な姿勢をキープします!
けんぞう先生
けんぞう先生その意気ごみは嬉しいのですが、実は先にお伝えしたいことがあって。どんなにいい姿勢でも、「同じ姿勢のまま動かない」こと自体が身体には負担なんです。
みなみ
みなみえっ、いい姿勢でもダメなんですか?
けんぞう先生
けんぞう先生筋肉は、動くことで血が巡って、栄養が届いて、疲れが流れていきます。じっと固まっている時間が長いほど、いい姿勢でも筋肉はこわばっていく。だから目指すのは「完璧な姿勢を8時間キープ」ではなくて、「まあまあいい姿勢で座って、こまめに動く」。この方がずっと現実的で、身体にも優しいんです。
みなみ
みなみちょっと気が楽になりました。完璧じゃなくていいんですね。
けんぞう先生
けんぞう先生そこで提案したいのが、1時間に1回の「1分リセット」です。やることは3つ、全部で1分もかかりません。

1分リセットのやり方

  1. 立ち上がる(10秒):まず椅子から立つ。これだけで骨盤の向きが変わり、固まっていた股関節まわりが動きます。
  2. 胸を開く(20秒):両手を身体の後ろで組んで、軽く胸を張りながら、ゆっくり天井を見上げる。縮こまっていた胸の前側とのどの前が伸びる感覚があればOKです。反動をつけず、痛みのない範囲で。
  3. 深呼吸を3回(30秒):鼻から深く吸って、口からゆっくり吐き切る。胸を開いた状態で呼吸をすると、肋骨まわりがふくらみやすく、呼吸が深く入りやすい状態をつくれます。
みなみ
みなみこれなら、オンライン会議の合間でもできそうです。
けんぞう先生
けんぞう先生タイマーやスマートウォッチで1時間ごとに知らせるようにしておくのがおすすめです。「気づいたらやる」は、集中していると絶対に忘れますから。トイレに立つ、飲み物を入れ直す、そういう用事とセットにするのも続けやすいですよ。

日中の座り姿勢は、夜の眠りにもつながっている

みなみ
みなみちなみに…最近、寝ても疲れが取れない感じがあるんですけど、これも関係ありますか?
けんぞう先生
けんぞう先生大いにあり得ます。背中を丸めた姿勢が長く続くと、肋骨まわりが縮こまって、呼吸が浅くなりがちなんです。そして呼吸の浅い状態が続くと、身体は緊張モードのまま夜を迎えやすくなる。本来、眠るときは身体がお休みモードに切り替わってほしいのに、日中に固めた緊張を布団まで持ち込んでしまうんですね。
みなみ
みなみ昼間の座り方が、夜まで尾を引くんだ…。
けんぞう先生
けんぞう先生だから日中の1分リセットは、肩のためだけでなく、夜の眠りの準備でもあるんです。寝る前の切り替えについては、布団の中でできる「けんぞう式深呼吸」を別の記事で紹介しているので、あわせて読んでみてください。

まとめ:肩を責めない。座り方と環境から変える

けんぞう先生
けんぞう先生最後に整理しましょう。
みなみ
みなみ肩こりって「肩の問題」だと思ってたけど、座り方の問題だったんですね。まずはパソコンの下に雑誌を積むところから始めます。
けんぞう先生
けんぞう先生いいですね、その一歩で十分です。それでも肩や首のつらさが強い、しびれがある、痛みが増していく──そんなときは我慢せず、医療機関で一度診てもらってください。身体の状態を整えた上で、机まわりの環境や寝具といった「道具」を選んでいく。その順番を、これからも一緒に大切にしていきましょう。

なお、枕を見直したいと感じている方は、選び方を整理した記事もあわせてどうぞ。


※本記事は一般的な情報提供を目的としています。強い痛みやしびれ、症状の悪化がある場合は、医療機関にご相談ください。

執筆・監修:けんぞう先生(整体師/施術歴23年・延べ4万5千人)