こんにちは、整体師のけんぞうです。

「首も肩も、毎日ストレッチしているのに……」

伸ばしたあとは、少し楽になる。でも、パソコンに向かっていると、また肩が重くなる。気づけば、いつもの首のつらさが戻っている。

「もっと長く伸ばさなきゃダメなのかな」 「ほかのストレッチも探した方がいいのかな」

そうやって、やることばかり増えていませんか?

頑張ってケアしている方にこそ、私が伝えたいことがあります。

水を足す前に、バケツの穴を見てほしいんです!

私が肩こり・首こりを考えるとき、特に大切に見ているのが「姿勢の悪さ」と「力み癖」の2つです。

「力み癖」とは、休んでいいときにも、身体にグッと力を入れ続けてしまう癖のこと。自分では、力を入れているつもりがない方もいます。

この2つをそのままにして、首や肩を一生懸命伸ばす。それは、大きな穴が2つ空いたバケツに、水をためようとしているようなものなんです。

今日は、ストレッチをしているときだけでなく、その前とあとに、身体がどうなっているかを一緒に見ていきましょう。

ここでお話しするストレッチは、首を横に倒したり、肩まわりを伸ばしたりするケアです。また、肩こり・首こりには病気などが関わる場合もあります。すべての原因を、この2つだけで説明する話ではありません。

1.水を足しても、穴が空いていたらこぼれてしまう

2つの穴から水がこぼれるバケツと、穴をふさいで水がたまるバケツの対比
みなみ
みなみ先生、肩がつらくなると、動画を見ながらストレッチするんです。でも、また戻ってくるから「まだ足りないんだ」と思って、次の動画を探しています。
けんぞう先生
けんぞう先生そこで、バケツを思い浮かべてみてください。底に、大きな穴が2つ空いています。そこに水を注いだら、どうなりますか?
みなみ
みなみ穴から出ていっちゃいますね。いくら入れても、たまらない。
けんぞう先生
けんぞう先生そうですよね。水がたまらないからといって、もっと注ぎ続けますか? まず、穴をふさぎますよね。

首や肩をストレッチしている。そのあと、また背中を丸めてパソコンに向かう。息を詰めたまま、スマホを見続ける。

私が気にしているのは、その繰り返しです。

水を注ぐ方ばかり頑張って、穴の方を忘れていないでしょうか。

姿勢を整える。力み癖を減らしていく。

その2つの穴をふさぐから、水がたまるんです。

みなみ
みなみ私、「まだ足りない、もっとやらなきゃ」ばっかり考えていました。
けんぞう先生
けんぞう先生一生懸命だからこそ、そう思うんですよね。その頑張りを、普段の姿勢や力み癖を見直す方にも向けてほしいんです。

バケツは、私がこの考え方を伝えるためのたとえです。穴をふさげば必ず痛みがなくなる、と約束するものではありません。

ここから、2つの穴を順番に見ていきましょう。

2.1つ目の穴|ストレッチのあと、どんな姿勢に戻っていますか?

パソコンやスマホに集中して、頭や肩が前に出ている姿勢

パソコンを開いて、仕事を始める。

最初は座り直していたのに、画面に集中するうちに、背中が丸まってくる。顔が、だんだん画面に近づいていく。キーボードへ伸ばした腕につられるように、肩も前へ。

ひと仕事終えて顔を上げたとき、「あれ、いつからこんな座り方になっていたんだろう」と思う。

そんなことはありませんか?

スマホを使っているときも、振り返ってみてください。

下を向いて、画面を見る。連絡を返すだけのつもりが、そのまま動画やSNSへ。気づけば、同じ姿勢で何時間もたっている。

みなみ
みなみストレッチ中は身体を気にしているのに、仕事が始まると、画面しか見ていないかもしれません。
けんぞう先生
けんぞう先生だから、ケアしている時間のほかに、仕事やスマホの時間も見てほしいんです。首や肩を伸ばしたあと、また同じ姿勢に戻っていませんか?

「どのストレッチをしよう?」を考える前に、「その前、どんな座り方をしていたかな?」も振り返ってみてください。

ただし、背筋をピンと伸ばして、一日中動かずにいる必要はありません。

日本整形外科学会も、肩こりに関わるものとして、首や背中に力が入る姿勢での作業や、長い時間、同じ姿勢でいることなどを挙げています。予防のためにも、同じ姿勢を長く続けないよう案内しています。日本整形外科学会「肩こり」

「どんな形で座るか」と一緒に、「そのまま動かずにいないか」も、見てみましょう。

ノートパソコンに集中して、椅子が後ろへ逃げていく話や、座り方のポイントは、こちらで詳しくお話ししています。

▶ 関連:ノートパソコンで肩こり。高額な椅子でも姿勢が崩れる「座り方」の話

3.2つ目の穴|力を抜いている「つもり」になっていませんか?

みなみ
みなみ姿勢は、写真を見たら「丸まってる!」と気づけそうです。でも、力み癖って、自分でわかるものなんですか?
けんぞう先生
けんぞう先生自分では、なかなかわからない方もいます。力が入った状態が、いつもの状態になっているからです。

私は、以前の「脱力の呼吸」の記事でも、こうお伝えしました。

「力を抜いているつもり」でも、首や肩にはまだ力が入っている。

現場では、そんな方がとても多いんです。

自分では、もう抜いているつもり。

だから「もっと力を抜いて」と言われても、「これ以上、どうすればいいの?」となってしまう。

みなみ
みなみ「ちゃんとリラックスしなきゃ」って、そこでも頑張ってしまいそうです。
けんぞう先生
けんぞう先生そうなんです。だから私は、まず、自分の身体がどうなっているかに気づいてもらいたい。その入口の1つが、呼吸です。

力み癖のある方によく見られる共通点の1つに、「呼吸が浅い」があります。

パソコンの画面に集中しているとき。

下を向いて、スマホを何時間も使っているとき。

その間、あなたの呼吸はどうなっていますか?

身体をグッと固めていないか。息を詰めていないか。まずは、そこを振り返ってみてほしいんです。

呼吸が浅いからといって、それだけで「力み癖が原因だ」と決めつけることはできません。私がここで伝えたいのは、自分の力みに気づくきっかけとして、呼吸も見てみよう、ということです。

4.呼吸が浅い人には、まず「吐く」から始めてもらいます

まず口から吐き、それから鼻で吸う流れ
みなみ
みなみ呼吸が浅いなら、大きく吸えばいいんですか?
けんぞう先生
けんぞう先生私がまずお伝えするのは、「いったん、息を吐いてみましょう」です。

現場では、息を吸ったところで止めて、そこからちょっと吐いて、ちょっと吸って……を繰り返している方が多いんです。

その状態から「もっと吸おう」としても、なかなか吸えません。

みなみ
みなみもう吸ったところで、止めているんですもんね。
けんぞう先生
けんぞう先生そうです。だから、まず吐く。それから吸う。 この順番をお伝えしています。

つらいところがあると、「どう伸ばす?」「どこを押す?」と考えたくなりますよね。

その前に、仕事をしていたときの自分を思い出してみてください。肩をグッと固めて、息も詰めたままになっていなかったでしょうか。

「そういえば、吸ったところで止めていたかもしれない」

そう気づいたら、いったん息を吐くところからです。

私が普段お伝えしている「脱力の呼吸」は、鼻からゆっくりぐぐーっと吸い込んで、口からストンと、ため息をつくように吐く方法です。

すでに吸ったところで止めているときは、最初にいったん吐く。それから、この呼吸につなげます。

ここで、息を無理に押し出す必要はありません。「全部吐かなきゃ」と頑張らなくていいんです。

苦しくなるほど大きく吸ったり、大きな呼吸を何度も続けたりする必要もありません。

英国の公的な医療機関NHSも、ストレスのための呼吸練習では、無理に深くしようとせず、楽にできる範囲で呼吸するよう案内しています。NHSの呼吸練習の案内

めまい、しびれ、息苦しさ、気分の悪さが出たら、そこでやめて、いつもの呼吸に戻してください。呼吸について医師から指示を受けている方は、その指示を優先してください。

「口からストン」がどんな感じか、呼吸で身体がどう動くのかは、図と一緒に説明しています。

▶ 関連:「力を抜いて」と言われても抜けない人へ。整体師が伝える「脱力の呼吸」

5.肩が前に入ったままでは、深く呼吸しにくいことも

みなみ
みなみまず吐いて、それから吸う。でも、丸まった姿勢のままでもいいんでしょうか?
けんぞう先生
けんぞう先生そこも、一緒に見てほしいんです。肩が前に入り込んだ「巻き肩」の方は、そもそも深い呼吸がやりにくいこともあります。

画面に顔を近づけて、背中が丸くなっている。

スマホに向かって下を向き、肩も前へ入り込んでいる。

そんな自分に気づいたら、息の吸い方や吐き方と一緒に、座り方も見直してみてください。

姿勢と力み癖。私は、この2つを一緒に見てほしいんです。

片方の穴を見つけて、もう片方はそのまま。それでは、また水がこぼれてしまいますよね。

みなみ
みなみ「肩がこるから、肩を伸ばす」で終わっていたけれど、仕事中の姿勢や息の仕方にも、目を向けるんですね。
けんぞう先生
けんぞう先生はい。ストレッチをしているときも、パソコンを使っているときも、同じあなたの身体です。その両方を見ていきましょう。

全部を一度に覚えなくて大丈夫です。

息を詰めていることが気になる方は、呼吸の記事へ。

座るとすぐに背中が丸くなる方は、座り方の記事へ。

今の自分に近い方から、進んでみてください。

6.肩が気になったら、この3つを思い出そう

次に首や肩が気になったら、伸ばす前に、少し振り返ってみてください。

  1. 今まで、どんな姿勢だった? 画面に顔を近づけて、頭や肩が前へ出ていなかったでしょうか。
  2. 息は、どうなっていた? 吸ったところで止めたり、浅い呼吸を繰り返したりしていなかったでしょうか。
  3. ケアのあと、また同じことをしていない? 伸ばしたあと、また同じ座り方や力み方に戻っていなかったでしょうか。

「今日もダメだった」と、自分を責めるためのチェックではありません。

「私は、仕事に集中すると息を詰めやすいんだな」 「夕方になると、顔が画面に近づいているんだな」

そんな自分の癖に、気づくためのものです。

みなみ
みなみ一日中気をつけるのは難しいけれど、肩が気になったときに思い出すなら、できそうです。
けんぞう先生
けんぞう先生まずは、そこからでいいんです。もっと長く、もっと強く伸ばす方法を探す前に、今の自分を見てみましょう。

7.道具を使うなら、先に「何をしたいか」を決めよう

みなみ
みなみ家にストレッチポールやローラーがあるんですが、あれは使ってもいいんですか?
けんぞう先生
けんぞう先生まずは「何のために使うのか」を考えましょう。胸や背中を広げる手助けがほしいのか。大きな筋肉が硬くなっている感じが気になるのか。やりたいことで、選ぶ道具も変わります。

仕事中の姿勢や呼吸を振り返るところは、道具を買わずに始められます。

そのうえで、道具の助けを借りたいなら、自分の困りごとに合うものを選んでほしいと思います。

「肩こりに良さそう」という言葉だけで、次々に買い足す前に、いったん立ち止まってみてください。

その道具で、自分は何をしたいのでしょうか?

家にあるものを使うのか、新しく選ぶのかを考えるときも、まず目的から。

ストレッチポール、フォームローラー、マッサージボール。それぞれの違いは、こちらでまとめています。

▶ 次に読む:ストレッチポール・フォームローラー・マッサージボール、どれを買う?目的別の使い分けを整体師が整理

ポールとローラーを詳しく比べたい方は、その選び方の記事から比較記事へ進めます。

道具を使うときも、バケツの2つの穴は忘れずに。日ごろの姿勢と力み癖も、一緒に見ていきましょう。

8.こんなときは、先に病院で相談してください

首や肩のつらさには、姿勢や力み癖のほかに、病気などが関わっている場合もあります。日本整形外科学会も、ほかの病気に伴う肩こりがあることや、原因となる病気にはその治療が必要なことを案内しています。日本整形外科学会「肩こり」

次のようなときは、ストレッチや呼吸法だけで何とかしようとせず、病院で相談してください。

  • 腕や手がしびれる。力が入りにくい。
  • 痛みが強い。だんだんひどくなっている。
  • 転んだり、事故にあったりしたあとから痛い。
  • 首の痛みが何週間も続く。生活で困っている。症状が心配。
  • 息がしにくい状態が続く。呼吸を試すと苦しくなる。

腕や手のしびれ、力の入りにくさは、首の神経が関係する病気でも起こります。日本整形外科学会「頚椎症性神経根症」 長く続く首の痛みなどで受診する目安は、NHS「Neck pain」でも案内されています。

「息がしにくいのも、力み癖のせいだろう」と決めつけないでください。急に強く息苦しくなったり、胸が痛くなったりした場合は、救急の対応を優先してください。NHS「Shortness of breath」

9.まとめ|水を足す前に、2つの穴を見よう!

みなみ
みなみ「もっとストレッチしなきゃ」の前に、仕事中の姿勢と、力が入りっぱなしになっていないかを見るんですね。
けんぞう先生
けんぞう先生そうです。私は、そこをいちばん伝えたいんです! ケアをしているときだけでなく、毎日の中で、身体がどうなっているかを見てほしいんです。

姿勢の悪さと、力み癖。

その2つの穴を空けたまま、水を注ぎ続けていませんか?

首や肩を伸ばしても、仕事へ戻ると、背中が丸まっていく。画面に集中して、また息を詰めてしまう。

その繰り返しに気づくことも、大事なケアです。

今日、持ち帰ってほしいのは、この3つです。

  • ストレッチの前とあと、どんな姿勢でいるかを見る。
  • 力み癖に気づく入口として、自分の呼吸を見る。
  • 吸ったところで止めていたら、まず吐く。それから吸う。

姿勢を整える。力み癖を減らしていく。道具を選ぶなら、その道具で何をしたいかを決める。

頑張っているケアを、普段の過ごし方とつなげていきましょう。

強い痛みやしびれ、力の入りにくさ、息のしづらさがある場合は、まず病院で相談してください。

検査で異常が見つからなかったのに、つらさが続く方も、あきらめる必要はありません。症状が続いたり変わったりしたら医師に相談しながら、日ごろの身体の使い方も一緒に見直していきましょう。

私は、つらいところだけで終わらせず、その身体で毎日をどう過ごしているかまで、一緒に考えていきたいと思っています。身体の様子を見たうえで、自分に合う環境や道具を選ぶ。それが「カラダのねっこ」で大切にしている順番です。

※この記事の内容は一般的な情報提供であり、診断や治療の代わりにはなりません。