こんにちは、整体師のけんぞうです。
「首も肩も、毎日ストレッチしているのに……」
伸ばしたあとは、少し楽になる。でも、パソコンに向かっていると、また肩が重くなる。気づけば、いつもの首のつらさが戻っている。
「もっと長く伸ばさなきゃダメなのかな」 「ほかのストレッチも探した方がいいのかな」
そうやって、やることばかり増えていませんか?
頑張ってケアしている方にこそ、私が伝えたいことがあります。
水を足す前に、バケツの穴を見てほしいんです!
私が肩こり・首こりを考えるとき、特に大切に見ているのが「姿勢の悪さ」と「力み癖」の2つです。
「力み癖」とは、休んでいいときにも、身体にグッと力を入れ続けてしまう癖のこと。自分では、力を入れているつもりがない方もいます。
この2つをそのままにして、首や肩を一生懸命伸ばす。それは、大きな穴が2つ空いたバケツに、水をためようとしているようなものなんです。
今日は、ストレッチをしているときだけでなく、その前とあとに、身体がどうなっているかを一緒に見ていきましょう。
ここでお話しするストレッチは、首を横に倒したり、肩まわりを伸ばしたりするケアです。また、肩こり・首こりには病気などが関わる場合もあります。すべての原因を、この2つだけで説明する話ではありません。
1.水を足しても、穴が空いていたらこぼれてしまう

首や肩をストレッチしている。そのあと、また背中を丸めてパソコンに向かう。息を詰めたまま、スマホを見続ける。
私が気にしているのは、その繰り返しです。
水を注ぐ方ばかり頑張って、穴の方を忘れていないでしょうか。
姿勢を整える。力み癖を減らしていく。
その2つの穴をふさぐから、水がたまるんです。
バケツは、私がこの考え方を伝えるためのたとえです。穴をふさげば必ず痛みがなくなる、と約束するものではありません。
ここから、2つの穴を順番に見ていきましょう。
2.1つ目の穴|ストレッチのあと、どんな姿勢に戻っていますか?

パソコンを開いて、仕事を始める。
最初は座り直していたのに、画面に集中するうちに、背中が丸まってくる。顔が、だんだん画面に近づいていく。キーボードへ伸ばした腕につられるように、肩も前へ。
ひと仕事終えて顔を上げたとき、「あれ、いつからこんな座り方になっていたんだろう」と思う。
そんなことはありませんか?
スマホを使っているときも、振り返ってみてください。
下を向いて、画面を見る。連絡を返すだけのつもりが、そのまま動画やSNSへ。気づけば、同じ姿勢で何時間もたっている。
「どのストレッチをしよう?」を考える前に、「その前、どんな座り方をしていたかな?」も振り返ってみてください。
ただし、背筋をピンと伸ばして、一日中動かずにいる必要はありません。
日本整形外科学会も、肩こりに関わるものとして、首や背中に力が入る姿勢での作業や、長い時間、同じ姿勢でいることなどを挙げています。予防のためにも、同じ姿勢を長く続けないよう案内しています。日本整形外科学会「肩こり」
「どんな形で座るか」と一緒に、「そのまま動かずにいないか」も、見てみましょう。
ノートパソコンに集中して、椅子が後ろへ逃げていく話や、座り方のポイントは、こちらで詳しくお話ししています。
▶ 関連:ノートパソコンで肩こり。高額な椅子でも姿勢が崩れる「座り方」の話
3.2つ目の穴|力を抜いている「つもり」になっていませんか?
私は、以前の「脱力の呼吸」の記事でも、こうお伝えしました。
「力を抜いているつもり」でも、首や肩にはまだ力が入っている。
現場では、そんな方がとても多いんです。
自分では、もう抜いているつもり。
だから「もっと力を抜いて」と言われても、「これ以上、どうすればいいの?」となってしまう。
力み癖のある方によく見られる共通点の1つに、「呼吸が浅い」があります。
パソコンの画面に集中しているとき。
下を向いて、スマホを何時間も使っているとき。
その間、あなたの呼吸はどうなっていますか?
身体をグッと固めていないか。息を詰めていないか。まずは、そこを振り返ってみてほしいんです。
呼吸が浅いからといって、それだけで「力み癖が原因だ」と決めつけることはできません。私がここで伝えたいのは、自分の力みに気づくきっかけとして、呼吸も見てみよう、ということです。
4.呼吸が浅い人には、まず「吐く」から始めてもらいます

現場では、息を吸ったところで止めて、そこからちょっと吐いて、ちょっと吸って……を繰り返している方が多いんです。
その状態から「もっと吸おう」としても、なかなか吸えません。
つらいところがあると、「どう伸ばす?」「どこを押す?」と考えたくなりますよね。
その前に、仕事をしていたときの自分を思い出してみてください。肩をグッと固めて、息も詰めたままになっていなかったでしょうか。
「そういえば、吸ったところで止めていたかもしれない」
そう気づいたら、いったん息を吐くところからです。
私が普段お伝えしている「脱力の呼吸」は、鼻からゆっくりぐぐーっと吸い込んで、口からストンと、ため息をつくように吐く方法です。
すでに吸ったところで止めているときは、最初にいったん吐く。それから、この呼吸につなげます。
ここで、息を無理に押し出す必要はありません。「全部吐かなきゃ」と頑張らなくていいんです。
苦しくなるほど大きく吸ったり、大きな呼吸を何度も続けたりする必要もありません。
英国の公的な医療機関NHSも、ストレスのための呼吸練習では、無理に深くしようとせず、楽にできる範囲で呼吸するよう案内しています。NHSの呼吸練習の案内
めまい、しびれ、息苦しさ、気分の悪さが出たら、そこでやめて、いつもの呼吸に戻してください。呼吸について医師から指示を受けている方は、その指示を優先してください。
「口からストン」がどんな感じか、呼吸で身体がどう動くのかは、図と一緒に説明しています。
▶ 関連:「力を抜いて」と言われても抜けない人へ。整体師が伝える「脱力の呼吸」
5.肩が前に入ったままでは、深く呼吸しにくいことも
画面に顔を近づけて、背中が丸くなっている。
スマホに向かって下を向き、肩も前へ入り込んでいる。
そんな自分に気づいたら、息の吸い方や吐き方と一緒に、座り方も見直してみてください。
姿勢と力み癖。私は、この2つを一緒に見てほしいんです。
片方の穴を見つけて、もう片方はそのまま。それでは、また水がこぼれてしまいますよね。
全部を一度に覚えなくて大丈夫です。
息を詰めていることが気になる方は、呼吸の記事へ。
座るとすぐに背中が丸くなる方は、座り方の記事へ。
今の自分に近い方から、進んでみてください。
6.肩が気になったら、この3つを思い出そう
次に首や肩が気になったら、伸ばす前に、少し振り返ってみてください。
- 今まで、どんな姿勢だった? 画面に顔を近づけて、頭や肩が前へ出ていなかったでしょうか。
- 息は、どうなっていた? 吸ったところで止めたり、浅い呼吸を繰り返したりしていなかったでしょうか。
- ケアのあと、また同じことをしていない? 伸ばしたあと、また同じ座り方や力み方に戻っていなかったでしょうか。
「今日もダメだった」と、自分を責めるためのチェックではありません。
「私は、仕事に集中すると息を詰めやすいんだな」 「夕方になると、顔が画面に近づいているんだな」
そんな自分の癖に、気づくためのものです。
7.道具を使うなら、先に「何をしたいか」を決めよう
仕事中の姿勢や呼吸を振り返るところは、道具を買わずに始められます。
そのうえで、道具の助けを借りたいなら、自分の困りごとに合うものを選んでほしいと思います。
「肩こりに良さそう」という言葉だけで、次々に買い足す前に、いったん立ち止まってみてください。
その道具で、自分は何をしたいのでしょうか?
家にあるものを使うのか、新しく選ぶのかを考えるときも、まず目的から。
ストレッチポール、フォームローラー、マッサージボール。それぞれの違いは、こちらでまとめています。
▶ 次に読む:ストレッチポール・フォームローラー・マッサージボール、どれを買う?目的別の使い分けを整体師が整理
ポールとローラーを詳しく比べたい方は、その選び方の記事から比較記事へ進めます。
道具を使うときも、バケツの2つの穴は忘れずに。日ごろの姿勢と力み癖も、一緒に見ていきましょう。
8.こんなときは、先に病院で相談してください
首や肩のつらさには、姿勢や力み癖のほかに、病気などが関わっている場合もあります。日本整形外科学会も、ほかの病気に伴う肩こりがあることや、原因となる病気にはその治療が必要なことを案内しています。日本整形外科学会「肩こり」
次のようなときは、ストレッチや呼吸法だけで何とかしようとせず、病院で相談してください。
- 腕や手がしびれる。力が入りにくい。
- 痛みが強い。だんだんひどくなっている。
- 転んだり、事故にあったりしたあとから痛い。
- 首の痛みが何週間も続く。生活で困っている。症状が心配。
- 息がしにくい状態が続く。呼吸を試すと苦しくなる。
腕や手のしびれ、力の入りにくさは、首の神経が関係する病気でも起こります。日本整形外科学会「頚椎症性神経根症」 長く続く首の痛みなどで受診する目安は、NHS「Neck pain」でも案内されています。
「息がしにくいのも、力み癖のせいだろう」と決めつけないでください。急に強く息苦しくなったり、胸が痛くなったりした場合は、救急の対応を優先してください。NHS「Shortness of breath」
9.まとめ|水を足す前に、2つの穴を見よう!
姿勢の悪さと、力み癖。
その2つの穴を空けたまま、水を注ぎ続けていませんか?
首や肩を伸ばしても、仕事へ戻ると、背中が丸まっていく。画面に集中して、また息を詰めてしまう。
その繰り返しに気づくことも、大事なケアです。
今日、持ち帰ってほしいのは、この3つです。
- ストレッチの前とあと、どんな姿勢でいるかを見る。
- 力み癖に気づく入口として、自分の呼吸を見る。
- 吸ったところで止めていたら、まず吐く。それから吸う。
姿勢を整える。力み癖を減らしていく。道具を選ぶなら、その道具で何をしたいかを決める。
頑張っているケアを、普段の過ごし方とつなげていきましょう。
強い痛みやしびれ、力の入りにくさ、息のしづらさがある場合は、まず病院で相談してください。
検査で異常が見つからなかったのに、つらさが続く方も、あきらめる必要はありません。症状が続いたり変わったりしたら医師に相談しながら、日ごろの身体の使い方も一緒に見直していきましょう。
私は、つらいところだけで終わらせず、その身体で毎日をどう過ごしているかまで、一緒に考えていきたいと思っています。身体の様子を見たうえで、自分に合う環境や道具を選ぶ。それが「カラダのねっこ」で大切にしている順番です。
※この記事の内容は一般的な情報提供であり、診断や治療の代わりにはなりません。

